「組織でうまく泳ぐことに限界を感じたんです」。誰もが羨む大手商社のキャリアを手放し、還暦を過ぎた61歳で日本のスタンドアップコメディの道を切り開こうとする男性がいます。安定した給与や輝かしい肩書きを捨ててなぜ彼は別の人生を選んだのか。人生の後半戦、誰にも似ていない道を進むRyo Hayashiさんが、いま見据えているものとは──。
エリート路線に「たまたま乗っかった」

── Ryoさんは24年に配信された人気恋愛リアリティ番組に還暦で出演。話題を呼びました。現在はひとりで観客の前に立ち、話芸で笑いを届ける「スタンダップコメディ」に取り組んでいるそうですね。まずは、今どのような生活をされているのか伺えますか?
Ryoさん:職業を聞かれたら「スタンダップコメディアンです」と言っていますが、それだけではやっていけないので、長年続けている投資収益で補ってます。60歳になってから国民年金の前倒しも堂々ともらってます。
── コメディアンとしての収入はどうやって得ているのでしょうか?
Ryoさん:「東京コメディーバー」という全国でも数少ない日本のコメディクラブに週3回ほど出演しています。あとは企業や団体に呼ばれて、スタンダップコメディを披露して収入を得ている感じですね。
── もともとは上智大学を卒業後、大手商社でバリバリ働くエリートだったそうですね。
Ryoさん:自分としてはたまたまエリート路線に「乗っかった」という感じでした。進学校ではない高校から猛勉強の末、上智に入学し、ラグビー部に入ったところ、OBに商社勤務の人がたくさんいたのが縁です。「車両本部」という部署に配属され、中南米に日本のトラックやSUVを売りこむ仕事をしていました。
バブル真っただ中でしたし、入社後はCAとたくさん合コンをするなど、夜は遊んで弾ける生活でしたね。ただ、当時の僕は自分自身にプレッシャーをかけてしまって徐々に仕事がつらくなり、3年目のときに、今で言う「メンヘラ」っぽくなってしまったんです。
── その状態からどのように回復したんですか?
Ryoさん:人事に「辞めます」と言ったら、「給料の7割出すし、1年くらい休んでもいいから」と引き留められてしまって。バブル時代だったので、人材を失いたくなかったんでしょうね。「簡単には辞められない…」と絶望しましたが、会社が持っていたラグビー場で同僚と週末にラグビーをするようになったら、憑き物が取れたように身体も心も自然と回復していきました。