弱点の「花粉症」機に広がった世界
── 歌手にとってのどの調子はまさに生命線です。花粉症とはどう向き合ってこられたのでしょう。
イルカさん:昔、春先に気持ちが落ち込む時期があって、漢方の先生に相談したら「それは花粉症の症状です」と言われたんです。そこから半年にわたる断食をしたり、いろいろなことをして体質改善に努めたのですが、やっぱり完全にはぬぐいきれなくて。
それなら「もうこの時期は休んじゃおう」と気持ちを切り替えました。でも、ボーッとしているだけだともったいないから、その時期にしかできないことをやろうと考えて、曲を作ったり、本を書いたり。毎年続けている着物の制作も、この時期に集中して取り組んでいますね。

── 春に休養する2か月間が、新しい創作の場になっているのですね。着物のデザインは、どのようなきっかけで始められたのですか。
イルカさん:夫(神部和夫氏)の親戚に呉服屋さんが多くて、「着物を着る機会が少なくなっている今、この世界を盛り上げるために協力してもらえませんか?」と、声をかけていただいたのがきっかけでした。
最初は「そんな専門的なことはできない」と、お断りしていました。でも、そのころ、絵本を描いていたので、「帯のデザインくらいならできるかもしれない」と気持ちも前向きになって挑戦することに。自作の絵本『まあるいいのち』の表紙を帯に描いてみたら、すごく楽しくて!すっかりその魅力にはまり、もう10年以上続けていますね。毎年3月になると、京都の工房へ1〜2週間通いつめて年1作ずつ、着物と帯のデザインを手がけているんです。

── 弱点ともいえる花粉症をきっかけに新しい世界が広がるなんて、まさに逆転の発想ですね。
イルカさん:私はいつも、どんなことでもマイナスだけじゃなくて、必ずプラスの要素があると思っているんです。たとえ小さくても、そのプラスを見逃さずにつかむことが大事なんです。
花粉症になったおかげで「休む」というきっかけができて、日頃できなかったことに向き合えるようになった。多くの人はマイナスばかり見てしまうけれど、それではもったいないですよね。ほんのわずかでもプラスがあったら、そこをちょっとつまんでみる。小さなプラスに気づくだけで、気持ちが少し楽になるんです。