「花粉症」は体を立て直すきっかけだった
── 起きたことをプラスにとらえ直す。その柔らかい発想が、長く続けてこられた理由のひとつなんですね。
イルカさん:花粉症は身体にとってはつらいものですが、私にとっては「体を立て直すきっかけ」になったんです。あのときにムリを続けていたらのどを潰していたかもしれません。
だから、思いきって休んで、自分の体をちゃんとケアする方向に舵をきれた。そのころからお酒もやめましたし、生活のすべて「歌うこと」を中心に整えられるようになりました。私が仕事を頑張ると、当時、闘病中だった夫が本当に喜んでくれていたので、その期待に応えたい思いも強かったんです。
── 60歳からは母校・女子美術大学の客員教授として15年間、教壇に立ち続けていらっしゃいます。若い世代と向き合う時間は、イルカさんにどんな刺激を与えていますか?
イルカさん:年に一度、特別講義をやるんですが、私が教えるというよりは、今やっている活動を伝えています。この前は私の手描きの着物を実際に見てもらいました。音楽家の私がなぜ着物を作るのか。それは型にはまらず、自分が表現したいと思ったことに素直に向き合い、様々なことに挑戦してきたからなんです。それらを通して「今の君たちは、そのままでいいんだよ」と、将来のクリエイターたちに感じてもらえればと思っているんです。
みんな自分を信じて生きてほしいですね。昨年、女子美術大学が創立125周年を迎えた際には、同じく卒業生でハローキティの育ての親である山口裕子さんとタッグを組んで記念歌「天翔けるJOSHIBIちゃん」も作りました。世代を超えた新しい感性に触れるのは、私自身にとっても大きなエネルギーになります。

── 次世代にバトンを渡すことも、イルカさんにとって大切なライフワークなのですね。自然環境保護の分野でも、長年活動を続けていらっしゃいます。
イルカさん:2004年からIUCN(国際自然保護連合)の親善大使を務めています。生き物や自然への思いは私の表現の根幹にあるものです。デザインする着物のテーマも、「生物多様性」なんですよ。世界会議にその着物を着ていくと、海外の方も興味を持ってくださって、そこから会話が弾んだりします。
もともと子どものころから自然が好きで、もし音楽の道に進んでいなかったら、ジャングルや山奥で野生生物を調べる仕事をしていたでしょうね。こうした活動のすべてが、今の私の生きる力になっています。
取材・文:西尾英子 写真:イルカオフィス