サプライズで有名アーティストを招いて
── 有名歌手の歌を目の前で聞けるなんてめったにないこと。刑務所のなかとはいえ、盛り上がるのではないでしょうか?
鳥羽さん:刑務所慰問では受刑者が大きな声を出したり、手拍子をしたりするのは基本的にNGと聞いています。ただ、抑えきれないこともありますよね?そこで私は事前に所長さんにお会いして、こう話すようにしているんです。「ステージで歌っているとき、あまり静かだと調子が乗らない場面もある。立ち上がったり、暴れたりされたら困るけれど、声がけや手拍子なんかは大目に見てあげてください」と。というのも、女子刑務所の慰問では、サプライズを用意しているんです。

── サプライズというのは?
鳥羽さん:あらかじめゲストをふたり呼んでいます。ひとりはロック歌手の宇崎竜童さんで、もうひとりはトランぺッターの桑野信義さんです。サプライズですから受刑者は何も知らず、私だけの公演だと思っているわけです。それが突然、「じつは今日、ゲストがひとりいて…」の前振りで宇崎さんが登場し、カッコよく歌を歌う。その後、「もうひとりゲストが…」と言って、今度はクワマン(桑野さんの愛称)が出てきてトランペットを演奏する。2段階のサプライズ演出にみんな驚き、非常に喜んでもらえます。こんな豪華な慰問はめったにないですよ。
正直、1回の公演にはけっこうなお金がかかります。音響設備の運搬費用や交通費など負担は軽いものではありません。ですけれど、何か少しでも心に響いたなら、それでよしと思っています。
取材・文/百瀬康司 写真提供/鳥羽一郎