もう一度リングに立って戦いたい

── その後にがんが再発したそうですね?
高須さん:退院から2か月半後の定期検査で肝臓がんの再発が見つかりました。この出来事はこれまでの闘病生活のなかで、いちばんショックが大きかったですね。つらい開腹手術を乗り越えて、リハビリも終わり、ようやく格闘技に復帰した時期だったので。これからというときにわかった再発でした。
検査の結果、肝臓に7か所再発、肺に4か所転移していることがわかりました。いくつかの病院にセカンドオピニオンをお願いしましたが、どの医師もステージ4という厳しい意見で、どの医師にも「治る」「助かる」と言ってもらえなくて。肝臓がんの治療に特化している病院の医師、今の主治医だけは目指すべき治療のゴールを示してくれたので、そこの病院にお願いすることにしました。
── ショックが大きく、治療と向き合うのも大変だったと思います。そのなかでも支えになったことはありますか?
高須さん:自分のなかでモチベーションになったのは、格闘家としてあと1試合でいいから試合がしたいという気持ちでした。デビューしたばかりで、やり残したことがまだまだあるなと。中途半端で終わりにしたくなく、しっかりもう1試合戦いきりたいと思いましたね。
また、セカンドオピニオンで厳しい意見を言われるたびに、母がすごく泣いていて。その姿を見て、少しでも長く生きなくてはと思ったのもあります。
── どのような治療を行ったのでしょうか?
高須さん:転移があったため外科的な治療が難しく、まず最初に行ったのは化学療法でした。腫瘍に栄養がいかないように血管を遮断する治療と、肝臓の腫瘍に直接薬剤を入れる治療、さらには全身の抗がん剤治療を行いました。
すると、この治療がうまくいったようで、半年ほどで肝臓にあった腫瘍がなくなったんです。肺の腫瘍も全身の抗がん剤が効いたようで2つに減り、サイズも小さくなっていて。その後も全身の抗がん剤治療を続けて、腫瘍が小さくなったタイミングで肺の腫瘍の手術、翌々月には肝臓も根治を目指すためにもう一度開腹手術を行いました。あとから知ったのですが、再発がわかったときになにも治療をしなければ、余命3か月だったそうです。再発がわかってから1年くらいかかりました。
── ステージ4の宣告から劇的な回復ですね。
高須さん:本当にそうだと思います。最初に行った抗がん剤は体質に合わなかったようで、全身に湿疹が出たり、40度まで熱が上がったりしたこともありましたが、途中から保険適用になった抗がん剤が自分に合っていたんだと思います。回復時は1日でも早くリングに立ちたくて、トレーニングなどがんばりました。
その後、最後の抗がん剤治療が終わった7か月後に、また肺の再発、肝臓の再々発があったのですが、ショックはあったものの、やるべき治療がわかっていたので、以前よりは落ち着いて治療に入れました。前回と同じ化学療法で治すことができ、そこから6年間、今まで再発はしていません。
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つらい時間も多かった高須さんの闘病生活ですが、運命を大きく変えたのは再発したときに出会った主治医の存在でした。ゴールを示しつつ、格闘技を続ける高須さんを応援してくれる姿に、きっと大丈夫だと確信できたそう。現在は、格闘技を続けながら、パーソナルジムを開業。運動を通して、がん患者のサポートも行っているそうです。
取材・文/酒井明子 写真提供/高須将大