拍手も許されない刑務所で、ManamiさんとMegumiさんによる女性デュオPaix2(ペペ)は20年間、コンサートを開催し続けています。受刑者たちにメッセージを伝え続け、訪れた刑務所は全国500か所以上。服役中だった堀江貴文さんも絶賛したほどの実力の持ち主のふたりは、なぜコンサートを続けるのでしょうか。
「拍手も声援もなかった」初めてのステージ
── これまで全国500か所以上の刑務所や拘置所、少年院でコンサートを開いてきたPaix2さん。「刑務所のアイドル」とも呼ばれ、コンサートを通じて、受刑者の更生と社会復帰を支援してきました。はじめて刑務所で歌ったのは2000年のこと。最初のときはどんな感想を抱きましたか?
Manamiさん:はじめてのときは、独特な雰囲気に呑まれそうでした。刑務所のなかは何か所も厳密に鍵がかけられているし、所内はポスターなども貼られず、無機質な壁と柱があるだけ。これまで知らなかった世界を目の当たりにして、たじろぎました。
コンサート中もこれまで経験したことのない空気で。全員同じ囚人服を身に着け、みんな坊主頭。微動だにせずシーンと静まり返っていました。歌への反応もいっさいないから「どうしよう、どうしよう」と緊張で手が震えるほどでした。受刑者の人たちは慰問コンサートを観るとき、「声を出してはいけない」「音楽に合わせてリズムを取ってはいけない」など、たくさんの厳しいルールが課せられているようです。当時はそれを知らなくて…。
Megumiさん:歌い終わっても拍手もないから「失敗したんだ…」と落ちこんで。ところが、後からすごく評判がよかったと聞き、驚きました。それからはありがたいことに、いろんな刑務所に少しずつ呼んでいただく機会が増えていきました。

── 最初のコンサートが好評だったんですね。そもそもどういったきっかけで刑務所で歌うことになったのでしょうか?
Manamiさん:2000年にインディーズデビューしてから、ボランティアで小中学校で歌わせてもらっていました。活動の幅をもう少し広げたいと思っていたところ、地元の鳥取県警倉吉警察署で1日署長をすることになって。「さわやかな歌声が刑務所に合っているかもしれない」と、勧められたんです。
刑務所で歌うのは、それほど抵抗はありませんでした。「観客が小中学生から大人に変わる」くらいの感覚で。それがまさか、20年も活動を続けることになるとは想像もしませんでした。