「なんでママは小さいの?」と言われたら
── 身長115センチと、とても小柄な体ですが、育児をしていて大変なことはありますか?
後藤さん:軟骨無形成症は、腕が短くて手も小さいので、抱っこをするのが難しいです。わたしが抱っこする場合は抱っこ紐を使います。すぐに抱っこができないので、夫や母にも手伝ってもらったり、ベビーラックに乗せてあやしたりしていました。
授乳するときは高さを合わせて支えるものが必須です。いろいろな授乳クッションを買って試しました。いまは育児グッズの種類が豊富なのでとても助かりますが、わたしに合うのかは使ってみないとわからないところはあります。抱っこ紐での抱っこも慣れてきましたが、今度は重くなってきて大変です。でも、子どものぬくもりを肌で感じられるのはうれしいです。

── 子育てをするようになり、以前と変わったと思うことはありますか?
後藤さん:「赤ちゃんってこんなにかわいいんだ!」と、毎日のように思っています。子どもを授かる前は、赤ちゃんが身近にいる生活を具体的に想像できていなかったんです。だから、自分がこんなに子どもに夢中になるとは考えていなくて。赤ちゃんが生活の中心にいるのが当たり前だし、ちょっとした表情の変化を見ているのも幸せです。
毎日のように成長していくのも新鮮で、「こんなことができるようになった」「おしゃべりが上手になってる」と、新しい発見の連続です。いまは、仕事をセーブして子育て中心の生活を送っています。来年以降少しずつ復帰していこうかと考えているところです。
── 保育園などに通い始めると、お子さんの世界も広がっていくと思います。
後藤さん:まわりのお友だちから刺激を受け、新しいことを学んでいくんだろうなと思います。それも楽しみですね。子どもの世界が広がることで、もしかすると「どうしてうちのママは、ほかのママよりも小さいんだろう?」と、疑問を抱くときがあるかもしれません。そのときは「ママは小さくてかわいいでしょ」と、伝えると思います。
「ママは小さいけれど、世の中には大きい人もいるし、ほかの個性を持った人もいるんだよ。いろんな人がいて、みんなそれぞれ違いがあって、それってすごく楽しいよね」と、伝えたいです。わたしの存在が、多様性を学ぶきっかけになるといいなと思っています。
子育てのお手本はわたしの両親
──「みんな違うけれどそれが楽しい」というのは、とても素敵な言葉ですね。子育てをしていくうえで、意識していることはありますか?
後藤さん:自分が子育てをするうえで、お手本にしたいのはわたしの両親です。ふたりはいつもわたしのことを、「小さくていいんだよ。仁美だけにしかできないことがあるんだよ」と伝え続けて、肯定してくれたからです。それが、小さいころからわたしの自信になっています。だからといって、ただ甘やかすわけでもありませんでした。きちんと「ダメなことはダメ」とけじめをつけ、叱るときは叱ってくれました。わたしも自分の両親のように子どもと向き合えたらいいなと思います。
── 素晴らしいご両親だと思います。
後藤さん:子どもの可能性を信じてあげたいとも思っています。両親はいつも、わたしがやりたいことを尊重してくれました。小学生のとき、兄と一緒に空手を習い始めました。でも、空手には軟骨無形成症の体の特徴によってできない動作があります。そんなとき、空手を諦めるのではなくて、先生と対応を考えてくれました。
中学生のころ、同級生たちと同じような服を着れらないので、友だちと一緒に服を買いに行けませんでした。でもファッションには人一倍興味があったわたしと一緒に服を買いに行って、着こなしのチェックにつき合ってくれました。高校生になって本格的にドラムを始めたときは、わたしが使える低いドラム用の椅子を探してくれて、楽器店に掛け合ってもくれました。
興味があることを大切にして、どうしたら取り組めるか一緒につき合って考えてくれたので、わたしも両親のように子どもの思いを大切にしたいです。そして「あなたはあなたのままでいいんだよ」と伝えたいし、その子らしさを尊重してあげられたらいいなと思っています。
取材・文/齋田多恵 写真提供/後藤仁美