世界的サーカス団「シルク・ドゥ・ソレイユ」で活躍する池田一葉さん。夫と4歳の息子を帯同し、世界中をツアーで巡る生活を送ってきました。現地ごとに保育園を探す“究極の保活”や、異文化のなかでの子育てに奮闘した日々とは──。

世界を股にかける「究極の保活」

池田一葉
11個の保育園を転々とした長男は当初泣くこともあったが、徐々に変化を受け入れる耐性が身につき、泣かなくなった

── 2017年に「シルク・ドゥ・ソレイユ」に入団。コロナ禍に出産し、2022年に舞台に復帰してからこれまで、ご家族を帯同して世界ツアーを回られてきました。これまで何か国を巡ってきたのでしょうか?

 

池田さん:息子が産まれてから、欧米を中心に6か国11都市を回りました。IT会社でプロジェクトマネージャーをしているアメリカ人の夫だけ一時的に帰国していた時期もありましたが、基本的に夫と息子を帯同してツアーを回っていました。いま息子は4歳なんですが、ベビーシッターさんに預けていた時期を除くと、これまで11個の異なる保育園に通ったことになります。

 

── 滞在先の各国でその都度、保活をするということですよね?考えるだけで大変そうです。

 

池田さん:本当に大変でした。ツアーの巡業先で滞在できるアパートメントはだいたい4か月前にわかるんです。そこから、通える保育園を自分でイチからリサーチしてリストアップします。さらに「こういう事情で決まった期間だけそちらに住むのですが、空きはありますか?」と片っ端から電話をかけるんですが、すぐに決まることはまずありませんでした。 

 

── 日本のように保育園に空きがないという感じですか?

 

池田さん:そういう場合もありますが、各国で保育や幼児教育に対する制度が違うことも大きいです。たとえばカナダやアメリカには、公立の保育園というものがそもそもありません。そのため、義務教育以前は家庭で面倒を見るか、私立に入れるかしかないという状況でした。私立でも、途中入園を受け入れてくれないところがあったり、そもそも保育料がべらぼうに高く、断念せざるを得なかった場合もありました。

 

── べらぼうに高い保育料とは、いくらくらいなんでしょう?

 

池田さん:だいたい20万円くらいからで、高くて断念したところでは1か月60万円でした。とにかく条件の合うところをひたすら探すんですが、次の滞在先と時差もあるので、仕事の合間をぬって時間を見つけては、ひたすら電話で保活をしていました。

 

6週間くらいで滞在期間が終わる都市もあるので、そういうときは2、3都市先の預け先まで調べなくてはなりません。次の都市の園が見つかって「は~、よかった…で、その次はどこだっけ?」と、ずっと保活をしている感じでした。