ゾンビやお化け屋敷で人生までもが救われる訳

── ホラーメイクは子どもから大人まで楽しめるんですね。変身した人の反応は?

 

マイケルティーさん:顔が変わると行動も変わります。誰もが持っている変身願望や「かまってほしい」「注目されたい」気持ちが、ホラーメイクで満たされるんですよ。私がメイクした人はみな喜んでくれますし、気持ちが落ち気味の人もパッと明るくなりますよ。メイク経験を経て承認欲求が満たされ、自己表現する喜びを知るみたいです。とくにゾンビメイクは彫りを深く見せるので、男性はイケメンになるのでうれしいらしいですね(笑)。

 

変身すると、ふだんは考えられないほど多くの人たちから記念撮影を求められ、「自分が求められている」と感じるそうです。変身時の写真を見返したり、SNSに投稿した写真への反応で、二次的に喜びを感じる人も多いです。それをきっかけに、自分でホラーメイクに挑戦し、イベントや撮影会に参加するなど次への意欲・自信につながるケースもあります。

 

── そこまで、影響があるとは驚きました。これまでにメイクしたなかで、印象的な方はいますか?

 

マイケルティーさん:とくに、「ポイント傷メイク」中は相手の腕や顔の肌に触れ、真近で目を見て会話するので、深い話をしてくださる方が多く、印象に残っています。これまで、リストカット経験のある方にメイクしたことがあります。彼ら彼女らには、手の甲やおでこに十字の傷メイクをし、そこに安全素材のガラスやボルトを刺したり、傷口に薔薇のツタがからまるなど「COOLでかっこいい、芸術性の高い傷」メイクをほどこしました。

 

手順としてまず、人工皮膚を作り、本人の腕にその人工皮膚を装着し、目の前で人口皮膚を実際にスパナチュラナイフでスパッと切って出血させるので、本当に自分が切られた気持ちになり、みなさん驚きます。そして、傷口から血が流れるメイクを見て、脳が錯覚を起こし、本人が痛みを感じるなど、疑似的に自傷行為を経験した気持ちになって、目が覚めたという人もいました。変身が終わってから、「みずからを傷つけることなく、自分の居場所を見つけられれば」と、特殊メイク技術を習得するために専門学校に進んだ人もいるんですよ。

 

私のプロデュースするお化け屋敷に入った方は「やっぱり、生きて帰りたい」と言いますが、ホラーメイク経験者も同じように「もっと生きたい」「自分らしく生きたい」とその場でリアクションを返してくれるので、やっていてよかったと思います。

 

 

マイケルティー・ヤマグチさんがプロデュースするお化け屋敷は「リタイア率」が最高で74%を記録するほどですが、単なる恐怖体験を提供するだけにとどまりません。人の不幸をお化け屋敷のテーマにせず、気品や知性を感じさせるストーリーを意識しているからこそ、怖がらせたりするのではなく、ストーリーの奥深さやキャラの人間性、テーマの社会性が心に訴えるのだそうです。

 

取材・文/岡本聡子 写真提供/マイケルティー・ヤマグチ、株式会社ZAUNTED