まぶたがない、頭蓋骨の一部が欠損しているなどの障がいを持って産まれた「おもちくん」こと未来くん。世界でも前例がない難病について知ってもらうために、ご両親の星野しほさん、孝輔さんはYouTubeで家族の日常を配信しています。しかし当初は誹謗中傷の心配など、夫婦に葛藤があって──。(全3回中の3回)

「どうすれば未来が生きやすい世の中になるか」

星野しほ、星野未来
1歳3か月。ママの真似で頬杖!?

── 未来くんが0歳のときから、YouTubeでお顔を出して配信されています。YouTubeで配信を始められたのはどうしてですか。

 

孝輔さん:未来は、目が離れていたりまぶたが欠損していたり、下あごが小さかったりという、お顔に特徴がある症状を持って産まれてきています。この社会を生きるうえで、顔って大事な要素じゃないですか。そこが人と違うということは、少なからず差別されたり、ひどい言葉を浴びせられたりする可能性が高いことは容易に想像できます。どうすれば未来が生きやすい世の中になるかを考えたときに「見慣れてもらって、自然なことだと受け入れてもらう」しか答えはないと。人種もそうだと思うんですよ。見慣れない人種の人がいたら「怖い」と感じるけれど、あたりまえに社会で一緒に生活することで受け入れられていく。人は知らないものが怖いから、知ってもらうしかない。

 

知ってもらう方法として、ひとつは妻が妊娠中からやっているブログを考えました。ブログでは未来は「おもちくん」として、存在がそれなりに知られていました。でも、ブログの読者層は医療ケア児の親御さんが多かったこともあって、未来の顔は出していなかったんです。一般の方にも見てもらうなら、動画でよりリアルに伝えられるYouTubeだ、と思って。本当は退院してすぐにやりたかったんですけど、退院直後は生活に慣れるまでバタバタして手が回らなくて、退院して2か月後にスタートしました。 

 

しほさん:妊娠中に症状がわかったときから「有名になったほうがいい」というアイデアがパパにはあったけれど、私はかなり不安で、慎重になっていました。「見慣れてもらう」「知ってもらう」というのは理想だし、そうなったらうれしいけれど、ネットに子どもの顔をさらすリスクや、冷たい言葉を浴びせられることもあるだろうな、と。

 

そういうマイナス要素から、私たちは未来を守りきれるだろうかと思うと、どんなリスクがあるか想像しきれないだけに、覚悟や判断が難しくて。すぐに「やろう」という気持ちにはなれませんでした。そこからパパと対話を重ねました。「おもちくんの顔は出さずに、医療ケアのハウツー動画ならいいよ」「そんなの誰が見るの?」と、いろいろ話したよね。最終的には私がパパに説得されて、「退院したところから始めよう」ということになりました。

 

孝輔さん:メリットとデメリットを、単純に天秤にかけたんですよね。誰も知らない状態で社会に出て、「何?この顔」と言われるより、有名になるリスクはあっても、「あ、おもちくんだ」と好意的に声をかけてもらえるなら、後者のほうがいい。将来、未来自身が「顔を出したくない」と言う可能性もありますが、そうなったらYouTubeはやめてもいいし、外に出たくなければ出なくてもいい。ネガティブ要素もあるけれど、ポジティブ要素のほうが多いと思ったから始めましたし、実際に始めてみても、ポジティブ要素のほうが多いです。