病気になって初めて気づいた苦しみ

── 2つの手術を1度に受けるというのは体に負担もかかりそうですが…。
Drまあやさん:手術は問題なく終わったものの、つらかったのが術後の痛みです。開腹部に加え、胆のう切除の腹腔鏡手術で穴が3か所開いているので、お腹の痛みが強く、寝がえりをしたいけれど、ちょっとでも動こうものなら激痛が走るんです。「お腹を切るってこんなに痛いものなのか」と患者さんの苦痛が理解できました。しかも、全身についているチューブがあんなにうっとおしいとは思いませんでしたね。よく手術後の患者さんが全部外そうとして暴れてしまう場面を見てきましたが「ああ、こういう気持ちだったのね…」と納得できました。
腹筋を切っていると、姿勢を保つのがつらいんです。呼吸にも関係してくるので、一つひとつの動作に支障が出ました。夜中に痛みがひどくて、看護師さんに「寝られないから麻酔をかけてほしい」と頼んだほど。本当に耐えられないほどの痛みで、暴れてしまい、反省しています。尿道カテーテルの不快感も大きかったですね。取り外しのときも本当につらくて「違う方法はないのかな」と今でも思います。ちなみに、問題の卵巣腫瘍は良性とわかり、腫瘍だけを切除して終わりました。
── 医師が病気を経験することで、患者の立場での気づきが得られたのですね。
Drまあやさん:まさにそうでしたね。病気になって初めて患者さんがどれだけつらいかを実感しました。その苦しみがとてもよくわかったので「これからはもっと温かい気持ちで患者さんに優しく接しよう」と誓いましたね。
── その後、体調管理はどうされていますか?
Drまあやさん:まあ、少し痩せなきゃいけないなとは、常々思ってはいるんですけど、まだ本格的にダイエットに取り組むまでは至っていませんね。もともと体が丈夫なので、それに甘んじてしまっているところがあって、ダメですね。ただ、採血や定期的な検査を通じて自分の状況を把握するようには心がけています。油断しているわけではなく、現状をしっかり知っておくことが大切だと思っています。
PROFILE Drまあやさん
どくたー・まあや。1975年、東京都生まれ。2000年、岩手医科大学医学部卒業後、慶應義塾大学外科学教室脳神経外科に入局し、脳神経外科医として勤務。35歳でデザインの名門校であるセントラル・セントマーチンに入学。2013年、「Drまあやデザイン研究所」を設立。脳神経外科医として働くかたわらファッションデザイナーとしても活動中。
取材・文/西尾英子 写真提供/Drまあや