人生の最期に向けた「終活」の一環として、「生前整理」への関心が高まっています。「その方が亡くなったあとに行う『遺品整理』よりメリットが多いと思います」と話すのは、「お片づけブラザーズ」の代表の柴田賢佑さん。その理由は意外なところにありました。(全2回中の1回)

生前整理は「親子関係を見直すいい機会」

── 柴田さんは、お片づけ芸人として「ゴミ屋敷、遺品整理、生前整理」など、さまざまなケースに対応してきた、いわば「お片づけのプロ」でいらっしゃいます。そもそも生前整理と遺品整理の違いが、よくわからない人も多いと思うのですが、具体的に何が違うのでしょう? 

 

お片づけブラザース
「お片づけブラザーズ」として活動する柴田さん(中央)

柴田さん:家を空っぽにするという目的は一緒ですが、そのプロセスが違います。生前整理では、ご存命の方、たとえば実家の片づけなら、お父さんやお母さんと一緒に仕分けをしていくことになります。手つかずになっていた荷物を掘り起こし、親と整理することで、「こんなことがあったね」と昔を振り返りながら作業ができるので、親子の絆が深まったという声が聞かれます。それに対して、遺品整理は、僕たちのような業者が片づけに入って、結果的にすべてのものを「処分」することになります。生前整理をすれば、ものが本来の寿命をきちんと全うできる可能性が増える。つまり、使われないままゴミとして処分されるのを待つものを、少しでも減らしたいんです。僕たちはそれを「昇華」と呼んでいるのですが。

 

実家の生前整理をすることによって、相続関係の書類の置き場所も把握できるので、揉めるリスクが減るというメリットもあります。亡くなってからの遺品整理の場合、相続に関する大事な書類や貴重品がどこにあるのかわからない状態に陥ることも…。親が亡くなったあとにあわてないためにも、生前整理を進めたほうがいいと思います。

 

柴田さんが実際に遺品整理を担当した家の様子

── 生前整理のデメリットとしてはどんなことが挙げられますか?

 

柴田さん:デメリットとしては、時間がかかること。いる、いらないの選別作業をする際に、親子双方の確認が必要となるので、どうしても時間がかかってしまいます。遺品整理の場合は、子どもが「いらない」と判断したら処分できますから。時間がかかるということは、そのぶんコストもかかります。まずは実家じまいにかけられる予算を出してみて、どちらを選ぶか判断するといいと思います。

 

── 予算に限りがある場合は、遺品整理を選ぶのが無難かもしれませんね。

 

柴田さん:そうですね。それと、「2度と顔を見たくない」レベルで親子の仲が悪い場合は、無理に生前整理をしようとして、かえってよくない結果に終わることも。そういったケースは、遺品整理を選んだほうが無難かもしれません。

 

ただ、親と折り合いが悪かったという人が、遺品整理をするなかで親が自分の子ども時代の思い出の品を大事に保管していたことを知り、親に対する気持ちが変わったという例がありました。生前整理なら感謝を伝えられますが、遺品整理の場合はそれができません。僕個人としては、生前整理は親子関係を見直すいい機会でもあるのではないかなと。親とスムーズに連絡が取れる状況なら、生前整理を検討したほうがメリットは多いと思います。