手術から半年。早期治療のおかげで日常を取り戻し

── 退院後の生活で、気をつけていることはありますか?
京子さん:先生から「重いものは持たないように」と言われているので気をつけています。特に術後まもなくは傷が引きつれてしまって、重たいドアを開けるのも大変でした。夫から「僕がやるから、絶対重いものは持たないで」と頻繁に注意されていたことを覚えています。それ以外は、いつも通りです。手術前と同じように仕事をして、ご招待いただいたパーティーに出席もしています。本当に良い先生に出会えて、適切な治療をしていただいたことに感謝しています。
── 現在も定期的に通院しているのでしょうか。
京子さん:今は2か月に1回病院に通い、変化がないかどうかの検査をしてもらっています。この定期通院にも、毎回デーブがつき添ってくれていましたが「もうひとりで大丈夫だから」と伝え、2月の通院からはひとりで通うことにしました。
── デーブさんの、京子さんを心配する気持ちが伝わってきますね。今は薬の服用などを続けているのですか?
京子さん:「ホルモン阻害剤」という、がんの再発を防ぐための薬を1日1回服用しています。この薬を飲むと「情緒が不安定になったり、骨密度が下がる可能性もある」と聞いていましたが、今のところ変化は感じていません。先日の検査でも骨密度は「平均値の98%で問題なし」という診断でした。ただ、この薬は5年間毎日飲まなければいけないので、副作用がないかどうかを定期的にチェックしていきたいと思っています。

── 食生活など、健康を維持するために意識していることはありますか?
京子さん:大きな病気を経験すると「食生活に気をつかう」という方も多いと思いますが、私の場合は以前と変わりなく「食べたい」と思うものを好んで食べています。
健康に関しては、人それぞれに考え方があると思います。私は「〜すべき」「〜してはいけない」という厳しい節制生活ではなく、自分が食べたいと思うものを選び、心が穏やかにいられる生活を大切にしていきたいと考えています。
── 乳がんの闘病を経て、感じていることを教えてください。
京子さん:昨年の9月に乳がんの診断を受け、10月に手術をしました。約半年が経った今も転移はなく、放射線治療や抗がん剤治療はせずに過ごせています。
今、こうして普段通りの生活があるのは、早くに治療を始められたおかげだと考えています。右胸に痛みを感じたとき、放っておかずに受診して本当によかったです。これまでは、定期的ながん検診を受けたことはなかったのですが、健康であることの大切さを身をもって感じることができました。がんはつらい病気ですが、早くに判明し、治療ができれば、いつも通りの日常生活を取り戻す可能性も高まります。このことを、たくさんの人に知ってもらいたいです。
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「心配をかけたくないから」と、乳がんを患っていたことをきょうだいや家族にも話していなかった京子さん。その後も、公にするかどうか迷っていたそうですが、前向きにがんと向き合う姿勢を示すために、テレビ番組『徹子の部屋』で乳がん治療について話すことを決意したそうです。
PROFILE 京子スペクターさん
きょうこ・すぺくたー。(株)スペクター・コミュニケーションズ代表取締役。高校卒業後に渡米し語学を学んだ後、ロサンゼルスのホテルに勤務。その後、デーブ・スペクターと出会い、結婚。帰国後に会社を設立し、テレビの企画やプロデュースなどを手掛けるなど、幅広く活躍する。現在、アルバニア共和国名誉領事を務める。
取材・文/佐藤有香 写真提供/京子スペクター