夫の根津甚八さんの介護と、幼い子どもをワンオペで育てた仁香さん。家計を支えるためにも仕事にも励みました。夫の死後、襲ってきた喪失感に更年期も重なったなか、たくましく育った息子は医師の道へ。いつか息子と話したいことがあるそうです。(全3回中の3回)

介護と育児で全力の15年「自分の時間は10分ほど」

── 根津甚八さんが亡くなる2016年まで、15年間にわたって闘病生活を支え、夫を看取った後はご自身も体調を崩されてしまったそうですね。

 

根津仁香
プロポーション抜群な根津仁香さん

根津さん:長い闘病生活が終わって緊張の糸が途切れ、燃え尽き症候群のような状態になってしまったんです。それまで、仕事以外のすべての時間を夫の介護と子育てに注いできました。夫は車いす生活でしたからつねにつき添いが必要で、さらに自分の仕事や子どもの受験などもあって、朝起きてから寝るまでずっと動いている状態。自分のために使える時間は1日10、20分くらい。好きな時間にお風呂入ったこともなければ、食事をゆっくり楽しむ余裕もない怒涛の日々でした。お医者さんや看護師さん、介護士さんたちの力を借りながら、なんとか毎日乗りきることができていたんですね。

 

そうしたことがすべてなくなり、「さあ、あなたの好きにしていいよ」と神様から急に言われても、何をしていいのかわからない。リビングにひとりでいると、無性にさみしさがこみあげてきて、涙が止まらなくなるんです。当時、私は54歳。夫を亡くしたつらさと更年期の不調が重なり、メンタルが不安定な時期が続き、心療内科にも行きました。

 

根津甚八、根津仁香
仲睦まじい!根津甚八さんと仁香さんが桜の季節に散歩したときのスナップ写真

── それはおつらかったでしょうね…。更年期はどんな症状があったのでしょうか?

 

根津さん:40代後半からホットフラッシュはありましたが、あきらかに更年期の症状が出始めたのは夫が亡くなる数年前の50代前半でした。髪の毛を洗うときに首を下に向けたり、ちょっと振り向くだけでめまいがして、天井がぐるんと回るんです。「これはおかしい」と思ってお医者さんに相談したら、メニエール病だといわれました。ひどいめまいが2、3年ほど続き、つらかったですね。

 

出演しているテレビショッピングの撮影では看護師さんにつき添ってもらい、本番直前まで誰とも話さずに体力と気力を温存。番組が始まったとたん、明るく元気に振る舞うものだから、きっと周りから見ると二重人格のようだったと思います。番組が終わると病院に直行していました。