憧れの職業を目指すも「向いてない」と言われ、逆に「向いてそう」と思われた職業に就くも結果が出ない。誰にでも起こりうる状況を、お笑いコンビ・ぽんぽこの高木ひとみ○さんも実感します。さて、その後、彼女はいったい──。(全3回中の1回)
養成所に入るのに200万円!どうやって用意する?
── 高木さんがお笑い芸人になった経緯を教えてください。

ひとみ○さん:もともと樹木希林さんに憧れていて、小さいころから俳優志望でした。とはいえ、私は熊本県出身で、どうしたら俳優になれるのかわからなかったんです。調べてみたら、東京には俳優の養成所というものがあると知りました。でも、費用が200万円かかると。一般家庭のわが家からするとけっこうな金額です。どうやって工面しようか悩んだのですが、うちのじいちゃんがいっぱい畑を持っていたんですね。「どうしても養成所に入りたい」とお願いしたら、畑を売ってくれて。おかげで養成所に入れました。
── 熊本から上京して俳優をめざすと高木さんが言ったとき、ご家族は反対しませんでしたか?
ひとみ○さん:反対はまったくなかったんです。両親はすごく楽観的なタイプだったから「俳優?いいじゃない。好きなことがあるんだったら頑張りなさい」と、背中を押してくれました。私はふたり姉妹の妹で、みんな私をお姫様みたいにかわいがってくれていました。例えば、家族でトランプをするときも私が負けると機嫌が悪くなるからって、ハンデをつけて勝てるようにしてくれたり。「勉強しなさい」とも言われたことがないし、叱られた記憶もないくらいです。私がやりたいことを否定せず、応援してくれた家族には本当に感謝しています。
俳優養成所で「俳優よりお笑い向き」と言われて
── 上京して入学した俳優養成所ではいかがでしたか?
ひとみ○さん:レッスンを受けたところ「高木さんは俳優という感じじゃないね。お笑いに転向したほうがいいと思うよ。売れっ子になったらドラマに出演できるかもしれないし」なんて、先生から言われてしまいました。はっきり理由を言われたわけではないのですが、俳優にしては声に特徴がありすぎたのかもしれません。でも私からしたら、じいちゃんが畑を売ってくれたお金でレッスンを受けているわけです。「はい、そうですか」と簡単に方向転換できないと思っていました。ところが、いくらオーディションを受けても結果はすべて不合格。「もしかして先生の言う通りかも…」と、うすうす感じるように。

とはいえ、俳優になれないからってすぐに熊本に帰るのも悔しくて。俳優はムリでも芸能界で爪あとは残すために最後まであがこうと腹をくくり、お笑い芸人を目指そうと決めたんです。憧れていたのは、劇団ひとりさん。やっぱり演技がしたかったから、お芝居の要素をがっつり取り入れた芸人さんになろうと思っていました。
── お笑い芸人になるためにどんなことをしましたか?
ひとみ○さん:お笑いについての知識がなくて、何から始めたらいいのかわからないんですよ。あるとき、芸人の女の子に「コンビ組まない?」って誘われたんです。それで、コンビを組んで初めて漫才に挑戦したんです。最初はあんまりなじみがなかったものの、だんだん漫才のカッコよさにめざめて、のめり込んでいきました。