「またこいつか」「オワコン」みたいなコメントが

── たとえばトークをもっとやりたかった、などはありますか?
ひょっこりはんさん:いや、むしろしゃべりはやりたくなかったですね。やりたくないというか、自信がなかったです。高校生くらいからしゃべることにコンプレックスがあったので、あんまりしゃべらなくていいネタを作ろうと思っていたくらい。バラエティー番組はエピソードを交えてしゃべる場面がたくさんあるし、僕がひな壇に座ってしゃべっていても、自分は周りからどう見られているんだろう。どんなキャラクターでその場にいればいいんだろうって考えてしまったんです。僕は最初に「ひょっこり」と登場することが多かったんですが、登場した後、みんなが僕をどう扱っていいのか迷っていたような感じもしたし、たぶん扱いにくいって思われていたんじゃないかな。
あと、よく芸人同士、チームプレイというか話の掛け合いみたいなのってあると思うんですけど、それも生まれなかったですね。僕も「うわ、目の前の人、すごくおもしろくなさそうな顔してるけど、僕のトークのせいかな」って思っちゃって。相手は次のトークの展開を考えていただけかもしれないし、ただの被害妄想かもしれないけど、そんなことばっかり考えてすごくひと目を気にしていましたね。
── どなたかにそうした思いを相談されることはありますか?
ひょっこりはんさん:あんまりしてなかったですが、当時からつき合っていた今の奥さんには泣きながら話を聞いてもらったことが何度かあります。カウンセリングみたいになってましたけど。奥さんは何か具体的なアドバイスをするわけじゃなかったけど「なんとかなるよ」っていつも見守ってくれていた感じはありましたね。彼女の言葉が励みにもなったし、彼女が「大丈夫だよ」って言ってくれたから大丈夫なのかなって安心することができたのかも。
── 多忙だった時期は、ご自身でどれくらい続いたと思いますか?
ひょっこりはんさん:1年半くらいだった気がしますね。そこから露出が徐々に減っていって、SNSの反応もだんだん変わっていくんです。テレビに出始めたころは「笑い転げた」とかプラスのコメントばかりでしたが、だんだん「またこいつか」「オワコン」みたいな意見が増えてきたので、飽きられてるのかなって思いはじめて。
── 多忙だった時期と、その後、仕事が落ち着いた時期を比較すると、どっちがつらいと感じていましたか?
ひょっこりはんさん:忙しかったときの方がつらかったですね。体力的にしんどかったし、精神的にも余裕がなくて、反省して次の仕事に生かすみたいなことができなかったし。でも、好きで始めた仕事だから楽しいこともあったんです。今は当時に比べて気持ちに余裕があるし、穏やかに過ごせています。逆にあのときの経験があるから、今は自分のペースを大事にしたり、自分の気持ちを内省しながら過ごせているのかもしれません。
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5年交際した奥さんと結婚し、現在プライベートでは2児の父となったひょっこりはんさん。2022年に第2子を出産した後に、奥さんから「すごく変わった」と言われるほど、家事や育児の向き合い方に変化が。目の前のこと一つひとつに誠実に向き合えるようになったそう。舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でロン役に抜擢されたのも、このころだったそうです。
PROFILE ひょっこりはんさん
1987年生まれ。滋賀県出身。早稲田大学卒業後、NSC東京校に入学。2013年から16年まで漫才コンビ「ダイキリ」(のちにトロフィーズに改名)として活動。18年元旦放送の「ぐるナイ おもしろ荘」出演をきっかけにブレイク。
取材・文/松永怜 写真提供/ひょっこりはん