ロス移住をきっかけにカミングアウトを決心
── 2023年にファンの皆さんの前でゲイであることをカミングアウトされました。個人的な感想になりますが、本当にカッコいい!と思ったし、大きな勇気をもらいました。カミングアウトをしようと決めたきっかけはあったのでしょうか。
與さん:ロサンゼルスに移住したことがいちばん大きいです。当時、知り合いも友達もいないところから生活がスタートしたんです。だから、とにかく友達をつくりたくて。本当は人混みとか知らない人が大勢いる場所とかは苦手なんですけど、どうにか友達や知り合いをつくらないと何も始まらないと思って。頑張っていろいろな場所に顔を出したり、人と知り合えるきっかけをつくったりしました。

そんななか、ある素敵な人と出会えて、その人のおかげで人とのつながりがすごく増えたんです。そこから世界が一気に広がって。ゲイの人とも話したし、いろんな人と仲良くなってつき合っていくうちに、この国ではゲイとかそうでないとか、そういうことはぜんぜん気にしないんだなって実感したんです。
といっても、当時はアメリカと日本との間を頻繁に行き来していたから、本当に信頼できる友達をつくるのは難しくて、何年もかかりました。仲良くなれるかなと思った矢先に日本に帰国することになったりしたので。でも、年数をかけていろんな人と知り合ううちに、信頼できる友達が増えていきました。英語も上達して、いろんな人と話せるようになり、すごく楽しくて。「ああ、僕だって自分に自信を持っていいんだ」と思えました。
── アメリカでいろんな人を知っていくなかで「ゲイかどうかなんて関係ない」と思えるご経験をされたのですね。そうするなかで自然とご自身への自信が蘇ったと。
與さん:そうですね。もちろん、カミングアウトしようと決めたときは、日本中の人から嫌われてバッシングされるんじゃないかとか、ファンが一人もいなくなっちゃうんじゃないかとか、最悪のことまで考えて悩みました。でも、アメリカでできた友達のおかげで、「もし最悪の状況になったとしても自分が生きる場所はあるかもしれない」って思えて。
アメリカで生活するまでは、ずっと「僕が悪いんだ」って自分を責めていました。でも、いろいろな友達と接するなかでそうじゃないって思えるようになったし、仲間がたくさんできたから、勇気が持てたんだと思います。もしロサンゼルスに移住せず、ずっと日本で暮らしていたら、きっとカミングアウトはしていなかったと思います。

── ロスでの経験が、そこまで與さんの考え方を変えたのですね。
與さん:そう思います。カミングアウトの前日や当日は、大勢の友達がメールや電話で「頑張って」「応援してるからね」ってメッセージを送ってくれて。特にアメリカの友達は、「何かあっても、僕たち私たちは、あなたのことを愛しているからね」と励ましてもくれました。今ではカミングアウトして本当によかったと思っています。それまで隠していた本当の自分をみんなに知ってもらえたんですから。
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悩み抜いた末、2023年7月に開催したファンミーティングで、自身がゲイであることをカミングアウトした與さん。第一線で活躍するなかで「自分がおかしいのか」と自身を責め続けた時期を経て、「今、自分はおもしろい人生を生きられている」と思えるようになったそうです。
PROFILE 與 真司郎さん
あたえ・しんじろう。1988年11月京都府出身。2005年、日本の男女混合パフォーマンスグループ、AAA(トリプル・エー)のメンバーとしてデビュー。2016年から2021年の活動休止までDOME TOURを5回開催。ソロアーティストとしても2019年、初のソロライブアリーナ公演、2021年には全国アリーナツアーを開催。2023年7月に開催したファンミーティングで活動開始を発表。現在、海外を旅しながらアーティスト活動を行っている。2025年4月には、自身初となるフォトエッセイを発売予定。
取材・文/高梨真紀 写真提供/與 真司郎