湘南ベルマーレで活躍した島村毅さんの長男・夏斗くん(8歳)が持つアンジェルマン症候群は、知的障がいや身体障がいなどのほかに、睡眠障がいを伴うことが特徴です。夜中や早朝に覚醒する夏斗くんと向き合う日々について伺いました。(全3回中の2回)
何時に起きるかわからない毎日は「地獄ガチャ」
── アンジェルマン症候群の特徴のひとつである、睡眠障がいについて聞かせてください。
島村さん:興奮を抑える薬や睡眠導入剤を飲んでひとまず寝るのですが、毎晩起きてしまって。起きると覚醒してしまうので、ずっと向き合ってくれている妻には本当に感謝しています。
ぼくは夏斗が2歳、サラが生後2か月ごろにサッカー選手を引退しました。皆さんには、現役時代のほうが大変だったんじゃないかと思っていただくことが多いのですが、試合の日以外は、午前中に練習をして筋トレや体のケアを済ませたら、午後には帰宅できることが多くて。ぼくが帰ると「ちょっと寝てきていい?」「うん、寝てきな。寝てきな」という感じで、妻とバトンタッチしていました。
引退後はお世話になってきた湘南ベルマーレの営業マンになったので、時間的なところで言うと、現役時代とは比べられないほど忙しくさせてもらうようになって。平日はおつき合いで食事に行かせていただくことが多いですし、スクールコーチもやらせてもらっているので、スクールが終わってから残業をすることもありますし、日曜日に試合やイベントでスタジアムに行くこともあります。ぼくは仕事がめちゃくちゃ楽しいので、「大変だけど大変ではない」という感覚なのですが、家にいる時間が短くなったことで、妻への負担はさらに大きくなったと思います。

── 現在は、ご夫婦でどのように分担されていますか?
島村さん:完全に分業制です。妻が兄妹を午後9時や10時に寝かせて、ぼくが帰宅したら、寝ている妹だけをぼくの部屋にピックアップして、愛犬・ガブリエルと3人で寝ます。夜中に何回か夏斗がふにゃふにゃすると妻が対応してくれて、朝方に夏斗が目を覚ますとぼくがリビングに連れて行くという形です。朝方と言っても、日によって3時台のときもあるし、4時半か5時半か6時半という地獄の3択のときもあるので、何時に起きるかわからない状態のことをぼくは“地獄ガチャ”と呼んでいます(笑)。
── “ガチャ”から出勤までの時間は、どんなふうに過ごしていますか?
島村さん:夏斗は4時半や5時半に起きると「わーっ!」と叫び始めて「ドアを開けろ、開けろ」と表現するので、まずは寝室からリビングへ連れて行きます。ぼくは少しでもソファーで横になりたいので、YouTubeで彼が好きなヒカキンさんの動画とか、水が好きなのでプールで外国人の方が遊んでいる動画とか、ギャルも好きなのでディズニーランドでギャルたちが遊んでいる動画とかを見せます。ただ、すぐに飽きてしまうこともあり、リモコンを持ってきて「まわせ、まわせ」と意思表示するんです。ハマる動画が見つからない日は、午前 4時半から7時半ごろまでずーっと「まわせ、まわせ」をするので、ぼくも半分目が閉じそうな状態で「これでしょ?これでしょ?」とささやきながら、ひたすらチャンネルを変えて。たまに「おっ!」と10秒ぐらい画面を見つめてくれて、「来た来た来た~!数分眠れるかも」と思っても「やっぱり違う!ほかの動画にして」という感じで。正解のないやりとりが永遠に続くので、ひたすら耐えます。
動画探しをあきらめたぼくがリモコンを隠すと、今度は体中をよじのぼって髪を掴んできて。ぼくもだんだんイライラしてきて頭がおかしくなりそうになるのですが、「これで手を出すのは違う。夏斗も好きで寝ないわけじゃないんだから」と考え直して、深呼吸しながら耐え続けて。次は、あえてリモコンを見せてからソファーの下にわざと滑り込ませて、手が届かずに一生懸命になっている間に3分だけ寝ようとするのですが、ソファーを動かせることに気づいて結局リモコンを取られます。
こうした攻防が続くと、どうしてもぼくの気を引きたい夏斗が、冷蔵庫を開けたりキッチンの水をジャーっと出してぴちゃぴちゃと遊び始めたりするんです。当然、冷蔵庫を開けられると閉めに行かなければいけないし、水を出されると止めに行かなければいけなくて。毎日水を出されるなかで、ぼくもようやく水道の元栓を閉めればいいということに気づき、夜中に元栓を閉めて、水道を使う時間帯になると元栓を開けに行くという時期もありました。
