湘南ベルマーレで活躍した島村毅さんの長男・夏斗くん(8歳)は、アンジェルマン症候群という難病を持っています。病気がわかったのは、夏斗くんが2歳3か月のときに、左右非対称のけいれんを起こしたことがきっかけでした。(全3回中の1回)
左右非対称のけいれんで入院し染色体検査を
──夏斗くんの産前産後の様子を教えてください。
島村さん:妊娠中は順調で、ちょっと小さいということと、逆子がなかなか治らないということ以外は心配ごとがなくて。障がいがあるかもしれないとは1ミリも考えていませんでした。逆子だったので予定帝王切開で出産するはずだったのですが、予定日の2週間前に破水して緊急帝王切開になったんです。産まれてきた夏斗は1766グラムで、思ったよりも小さかったので少し不安にはなったものの、NICU(新生児集中治療室)に入院したあとは退院まで予期せぬことは起きなかったので、大丈夫だろうと安心していました。
ただ、首がすわって寝返りをしたあと、おすわりができなかったり喃語が出なかったり、乳幼児健診のたびに少しずつ発達が遅れていっているように妻は感じていたみたいで。いろいろと調べるたびに「きっと何かあるんだろうなと思うと、不安がどんどん大きくなる」と言っていました。逆にぼくはずっとポジティブで「大丈夫でしょ。小さく産まれたんだから、ちょっと遅れるのは当たり前でしょ。きっと追いつくよ」という気持ちを最後の最後まで持ち続けていました。

──診断を受けるまでの経緯についても聞かせていただけますか?
島村さん:ぼく自身が「これは何かあるかも」と感じ始めたのは、けいれんが起きるようになった1歳半ごろからです。搬送先の病院で「小さい子に熱性けいれんが起きることは、レアなことではない」と聞いてはいたのですが、その後、毎日のようにピクつきが起きるようになって。数秒で落ち着くこともあれば、ちょっとこれは長くないか?と思うようなけいれんも続きました。
忘れられないのが、2歳3か月のときのことです。家族で旅行に行くことになり、空港へのアクセスがいい妻の実家に泊まっていたら、出発前日の朝に夏斗がものすごいけいれんを起こして。これまでの経験から「短い時間の左右対称のけいれんは大丈夫なこともあるけど、左右非対称の場合はやばい」というなんとなくの知識があったのですが、そのときのけいれんが左右非対称で。医療関係者だった妻のお母さんがすぐに気道確保をしてくれて救急搬送になったのですが、白目をむいてだんだん呼吸が浅くなっていく様子がすごく怖かったんです。いつもポジティブで「大丈夫、大丈夫!」と言ってきたぼくが、妻に「大丈夫だよね?」と聞かれても無言になってしまうくらい、いつもニコニコしている夏斗がもう戻ってこないんじゃないかと思うくらい、大きな不安に襲われました。
そのけいれんで入院した際に、医師から染色体検査を勧められて受けた結果、アンジェルマン症候群という診断がつきました。
──診断がついたときは、どのような心境でしたか?
島村さん:ただ発達がゆっくりなだけで健常だといいなと思っていた反面、夏斗が大きくなるにつれて、何かあるだろうとも感じてはいたので、そのタイミングでショックを受けることはありませんでした。妻も「きっと障がいがあるんだろうなと考えていたから、検査のたびに経過観察でモヤモヤが続くよりも診断がついたほうがいいと思っていた」と言っていました。実は、検査を受けたときは妻が2人目を妊娠していて、出産予定日の約1か月前だったんです。アンジェルマン症候群の種類によっては遺伝する可能性があるということをそのときに初めて知り、知識がないうえに心の準備もできていなかったので、とても大きな恐怖に襲われました。不安を抱えるなか検査の結果を聞いたところ、娘には遺伝しない「欠失型」というタイプだとわかりました。
夏斗は赤ちゃんのころからとにかくよく笑うし、水が大好きで、お風呂やプール、海などでは手を羽ばたかせて喜んでいたんです。診断がついたときに渡された、アンジェルマン症候群の主な特徴が書かれた用紙を見ると「キラキラしたものが好き」「水に魅了される」「手をバタバタさせて喜ぶ」「ちょっとしたことでもよく笑う」などと書かれていて。それを見た瞬間「これ、めちゃくちゃ夏斗じゃん!」と妻と顔を見合わせました。
もちろん、発語がなかったり重度の身体障がいと知的障がいを抱えていたりもするのですが、ひとつよかったことは、多幸感があるということです。障がいと聞くと重たい印象になりがちですが「人よりも幸せを感じやすいってめちゃくちゃ素敵じゃん!ずっと笑っていて多幸感があるなんて、ある意味めちゃくちゃいい障がいじゃん!」と、診断名や特徴を知ることでポジティブに捉えられました。
あとは、毎日のように続いていたけいれんがアンジェルマン症候群に起因するとわかったことで、薬を処方してもらえるようになって。ピクつきが落ち着くようになったのも、よかったですね。