わずか1歳でゴルフを始めてジュニア世界大会のメジャータイトル4冠を制覇し、昨年、13歳でプロゴルフツアーデビューを果たした須藤弥勒(みろく)選手。天才ゴルフ少女の母・みゆきさんは幼少期からハードな練習に取り組む娘に心を鬼にして助け舟は出さなかったと語ります。(全2回中の1回)

1歳半でおもちゃのゴルフボールをスパーンと飛ばした

── 弥勒さんのほか、2人の息子さんがいらっしゃいます。3人をどのように子育てしていますか?

 

1歳半のころの須藤弥勒
1歳半の弥勒さん。スパーンとボールを飛ばしたときの貴重な映像

須藤さん:現在長男は中学3年生、長女の弥勒が中学1年生、次男が小学4年生です。長男は、かなり厳しくしつけたと思います。30代半ばで結婚したので、3人とも高齢出産。子どもと一緒にいられる期間は、若いお母さんたちと比べるとそう長くないと思うんですね。また、母は私が20代前半のころに亡くなってしまったので、教えてほしいことが聞けなかったという思いがあり、自分の知識はできるだけ早いうちから子どもに教えておきたいんです。だから、自分がやってきたような習い事は子どもたちにもやってみてほしくて、茶道やピアノ、そろばんや書道、スイミングなどひと通り習わせています。どれも身につけておいて損はないスキルですよね。

 

── お子さんは、いつごろからゴルフを始めたのですか?

 

須藤さん:長男が3歳、弥勒が1歳になったころ、運動系の習い事をさせたくて、ボクシングや空手など、いろんなスポーツを体験させました。私は、自分が小学生から高校生までフィギュアスケートに取り組んできた経験から、2人にもフィギュアスケートを習ってもらい、兄妹でペアを組んだら、ソロの選手よりはランキング入りしやすいんじゃないかと考えていました。でも、夫に「フィギュアはお金がかかりすぎるし、夫婦2人ともが打ち込んだことがないスポーツがいい。だからゴルフをしよう」と言われ、押しきられました。

 

須藤弥勒、兄、弟
須藤家の3きょうだい。いちばん左が弥勒さん

── 弥勒さんのゴルフの才能に気づいたのはいつごろですか?

 

須藤さん:1歳半のときです。長男が少し先にゴルフを始め、リビングで打つ練習をしていたのですが、夫の指導が熱心すぎるので、長男は何度もトイレに逃げ込んでいました。その様子をソファで見ていた弥勒におもちゃのゴルフクラブを渡し、ボールを打たせてみると、スパーンと飛びました。夫が驚いて「弥勒すごいぞ」と私を呼びに来ました。そのときのことが動画に残っているので鮮明に覚えていて「将来、弥勒が有名になったらこの動画が出るかもね」と言いながら親バカ丸出しではしゃいでいました。

 

── 当時から足腰が強かったんですか?

 

須藤さん:歩けるようになったのも早くて、1歳ではオムツが取れていました。オムツが取れているならスイミングもOKというので週3、4回通い始めていたころです。

1歳の子どもにゴルフを教えてくれる人はいなかった 

須藤弥勒
ゴルフの練習に励む弥勒さん

── ゴルフは誰かに習い始めたのですか?

 

須藤さん:幼児にもゴルフを教えてくれる方を探したんですけれど、「1歳半なんてゴルフクラブが重くて持てないからまだ早い」と言われ、見つからなくて。夫が「じゃあ自分で教えるしかないか」となり、そこから夫はゴルフ関連の本を読みあさって練習方法や指導法を猛勉強していました。でも1歳半でゴルフを始めることは、私は早すぎることはないと思いました。私は小学3年生から始めたフィギュアスケートで日本上位を目指していましたが、3、4歳からスケートをやっていた子にはなかなか勝てなかったので、「もっと早いうちから始めていれば」と何度も思ったのです。

 

── 旦那さんが指導方法を自分で考えているのがすごいですね。

 

須藤さん:夫は東大で博士号を取り、海外の大学を卒業した研究者だったので、何にしても極めるタイプなんでしょうね。国内外のゴルフ関連の本を1000冊は読んだと思います。自宅の一室をパター練習場にリフォームし、庭にグリーンやバンカーを備えた練習場を作るなど、本当に熱心に指導しています。夫婦2人とも若くしてできた子どもではないので、自分たちがいついなくなっても子どもたちがやっていけるように、教えられることは教えておこう、という考えは共通しています。