車いす男性が振り絞って言ってくれた僕のギャグ
── さすが人生の大先輩ですね。言葉に重みを感じます。
加藤さん:もうひとつ、すごくうれしかったできごとがあるんです。お世話をさせていただいていた高齢のおじいちゃんがいたのですが、車いすで言葉がうまく出ない方でした。てっきり僕のことなんて知らないだろうと思っていたのですが、最終日に「今日で最後だよね…悔しいです!」と一生懸命に声を振り絞って、僕のギャグを言ってくださったんですよ。すごくびっくりして、泣きそうになりました。きっとあの場面は、一生忘れないと思います。

── 素敵なエールを贈ってくださったのですね。
加藤さん:なんて粋な方なのだろうと感激しました。おばあちゃんの「ここからまたやり直せる」という言葉も、あれ以来、僕の励みになっています。消防設備士の副業を始めたり、FP2級や宅建の資格に挑んだりと、前向きに挑戦する気持ちを持てるようになったのも、あの言葉のおかげだと思って感謝をしているんです。謹慎があけてすぐコロナ禍になってしまい、施設にご挨拶に行けず、ずっと気になっていたのですが、あるとき、仕事で熊本に行く機会があって、施設に電話をしてみたら、20人ほどいた当時の社員さんがほとんどやめていて…。介護の仕事は入れ替わりが激しい。それだけ大変な仕事だということなんですよね。
介護施設での経験を経て、自分の健康に対する意識も変わりました。介護士さんいわく、認知症にならないためには、とにかく下半身を鍛えることが大事らしくて。下半身の筋力が弱まると杖や車椅子生活になってしまう。行動が制限されることで引きこもりがちになり、認知症にもなりやすくなると。だから下半身を鍛えるために、とにかく歩く習慣がつきました。落ち込んでいるときでも、運動すれば心も前向きになる気がします。