10代の兄妹アーティスト「KANTA&KAEDE」。知的障がいを伴う自閉症の2人は、それぞれ集合絵と切り絵が得意で、その作品はファッションブランドやアーティストとのコラボアイテムに採用されています。石川県金沢市で個性あふれる兄妹を育てる母の輪島満貴子さんに、障がい発覚時の思いや子育てについて聞きました。(全2回中の1回)

医師は息子を一見しただけで「自閉症だね」

お散歩を楽しむ3人。左から貫太さん、楓さん、満貴子さん
お散歩を楽しむ3人。左から貫太さん、楓さん、満貴子さん

── 現在18歳の長男・貫太さん。自閉症とわかったのはいつごろですか?

 

輪島さん:貫太が1歳半のころ、私の母が「この子はほかの子と発達が違う気がする」と言ってきたんです。私は初めての子だったのでよくわからなかったのですが、母にとって貫太は5人目の孫だったので、ほかの子と比べて何か違和感があったんでしょうね。母があまりに心配しているので、何もなかったら安心するでしょう、という程度の気持ちで診察を受けたんです。ただ、当時は発達専門の外来など周囲にありませんでしたから、半年ほど予約待ちして受診しました。

 

── 満貴子さんのお母さんは、貫太さんのどんなところに発達の違和感があったのでしょうか?

 

輪島さん:名前を呼んでも振り向かない、表情が乏しい、話しかけてもリアクションがない、というところです。実は貫太は生まれてきたとき無呼吸状態で、集中治療室へすぐに連れて行かれました。あとで医師から聞いたところ「胎便吸引症候群だった」とのことで、羊水の中でのどに排泄物を詰まらせていたそうです。そのため出産後、MRI検査で異常がないかを念入りに調べた経緯があったので、受診したときは自閉症かどうかというより、出産時無呼吸状態だったことの後遺症を疑っていました。

 

── 医師の診断はどうだったのですか?

 

輪島さん:やっと診察の予約を取れた日が、長女(楓)の出産日と重なってしまい、貫太の病院には夫がつき添ってくれました。小児科医の先生は、病室に入ってアンパンマンのおもちゃを手に取った貫太を見るやいなや「あー。この子、自閉症だね」と言ったそうなんです。親への聞き取りや診察らしい診察もなかったので、夫が怒っていたのを覚えています。その後、正式に「自閉症」との診断が出ました。

 

でも当時私は、自閉症や発達障がいの知識がまったくなく、産院で夫からの電話を受けてそのことを聞いても「ふーん」と思う程度。産院の看護師さんに「うちの息子がどうやら自閉症らしいんです」と言ったら看護師長さんが飛んできて「お母さん、大丈夫ですか?」とものすごく心配されて、「そんなに心配することなのかな?」と驚いたくらいです。