震災から14年。子どもたちは「大きくなったね」と声をかけられ
── 震災直後から佐藤さんと一緒にたくさんの妊産婦さんたちと触れ合ったお子さんたちも大きく成長されたでしょうね。
佐藤さん:3歳だった息子は今17歳で、生後5か月だった娘は中学2年生になりました。とにかく一緒に妊産婦さんたちのいる場所に連れていったので、子どもたちは母親がどんな仕事をしているのか、なんとなくわかっていたようです。
何年か経つと、一緒に活動していた仲間や妊産婦さんだったお母さんたちが子どもたちに声をかけてくれることが増えたのですが、子どもたちはそれが不思議だったみたい。「知らないおじさんおばさんから、また『大きくなったね』って言われた」って(笑)。しばらくの間は恥ずかしがったり、「あの人誰?」って私に聞いたりしていましたが、今では息子はもう高校生なので、「こんにちは。はい、大きくなりました」と堂々としたものです(笑)。

── 佐藤さん自身は、当時の妊産婦さんたちとまだつながりはありますか?
佐藤さん:はい。この前、震災時に息子と一緒に遊んでいた男の子と再会したんです。「あのとき、あなたのお母さん赤ちゃん産んだよね。そのときに、そばにいた助産師は私だよ。うちの息子とも一緒にお風呂に入ったり、遊んでいたんだよ」と声をかけたら、「なんとなく覚えています」と答えてくれて。立派な青年になった彼の姿に涙が出てきました。私も、街を移動していると、あのとき妊産婦さんだったお母さんたちから「美代子さーん!」って声をかけてもらったりして。「あのとき『妊産婦さんたちをひとりにできない』という思いで活動を始めたけれど、続けていたらこんないいことがあるんだな」って、うれしい気持ちになりますね。
PROFILE 佐藤美代子さん
さとう・みよこ。1978年岩手県盛岡市出身。2001年より岩手県立久慈病院、東京の矢島助産院で助産師として経験を積んだ後、2007年に花巻市で助産院開業。2011年、花巻市の被災妊産婦受け入れ事業を立ち上げ、その活動を2017年、特定非営利活動法人まんまるママいわてとして法人化し、代表理事に就任。岩手県花巻市・北上市・釜石市・大槌町を中心に、妊産婦の産前産後を支えている。
取材・文/高梨真紀 写真提供/佐藤美代子