繁殖を目的にブリーダーに飼育されていた親犬が、年齢や体調で繁殖活動を引退した繁殖引退犬と呼ばれる犬をご存知でしょうか。ペットブームとともに引き取り手の不足などが問題視されています。現在2匹目の繁殖引退犬と暮らしているモデルで美容家の有村実樹さんに、普段の生活についてお話を伺いました。
引き取った直後に「かわいそうな犬」と言われ
── 有村さんは現在一緒に暮らしているシーリハム・テリアのイリスで7匹目の犬になるそうですね。
有村さん:自分で生活を始めてから飼った犬は2匹目で、どちらも繁殖引退犬です。実家では、5匹飼っていたのですが、3匹目まではペットショップで購入し、4匹目はペットショップで里親募集をしていた犬を引き取りました。実家の5匹目と、東京で飼った2匹はどちらも里親募集をしていた犬です。
── 繁殖引退犬を知ったきっかけはなんですか。
有村さん:東京でひとり暮らしを始めて、たまたま帰宅途中にいつもと1本違う道を通った際に、里親募集のポスターが貼ってあった建物に立ち寄ってみたんです。そこでは、ブリーダーをしていた方がお年寄りの繁殖引退犬の面倒をみていたのですが、廃業に伴ってその場所を畳まなくてはならなくなり、犬たちの引き取り先を探していました。
そこで暮らしていた犬を抱っこさせてもらったのですが、胸の周りにできものが出来ていて、「もうすぐ死んじゃうんじゃないか」と思ったのが先代のダイアンの第一印象です。当時10歳でした。「こんなに頑張ってきた人生だから、最期はうちでゆっくり迎えてあげられたらいいな」との思いで引き取りました。ダイアンはすごく強い子で、そこから5年近く生きてくれました。
── 現在飼っているイリスも繁殖引退犬だそうですね。
有村さん:2017年にダイアンが亡くなって数か月ほど経ってから、ネットで名古屋のブリーダーさんが里親を探しているのを見つけました。「シーリハム・テリア、5歳、メス、名前はイリス」という情報しかなく、見た目や体調などは何もわからなかったんですが、いつかシーリハム・テリアを飼ってみたかったので、どんな子でもいいと思っていました。先代のダイアンが繁殖引退犬だったのもあって、夫もすぐ賛成してくれました。
── そこからイリスを迎え入れたんですね。
有村さん:ブリーダーさんから「トリミングをしてからお渡しします」と言われていたのですが、引き取りに行ったとき、イリスは丸刈りだったんです。きっとあまりにも毛が汚れていたからだと思います。私はそれでもかわいいと思って引き取ってきたのですが、親戚にイリスの写真を見せたら「かわいそうに、病気なんだね」と言われました。イリスは病気でもなんでもなく、口の周りが汚れていただけだったんです。でも、今の見た目とは違いすぎるので人からは「かわいそうな犬を引き取ってきた」と思われたかもしれません。毛はどんどんきれいになって、ビフォーアフターを見ると皆さんびっくりされますよ。
── 繁殖引退犬は大人の犬になるかと思います。子犬から育てたいという方も多いですよね。
有村さん:もちろん子犬のかわいさはあります。ただ、これまで何匹も飼ってきているからかもしれませんが、年齢を重ねた老犬のかわいさもあると思います。愛している子が年を老いてきてもずっとかわいいと感じるんです。それに、どんな子も、愛情を注がれて丁寧に扱われていくと、表情が変わってキラキラしていきます。それは決して、毛並みが整っているとか、パーツの位置とかではなく、生きている愛らしさだと思います。