「自分の命を生ききる」とは

入院の付き添い家族への支援品受け渡しの様子
食事や支援品を受け取ったご家族から、毎日のように感謝の声が届く

──「命の有限さ」を知る経験が重なったことも、NPOの活動に専念する選択に繋がったのでしょうか。迷いはなかったですか。

 

光原さん:会社員を辞めてNPOに専念し始めた最初の3年間は無収入でしたし、周囲からの反対がなかったわけではありません。でも、人の命の儚さを目の当たりにする経験から「同じ日」がずっと続くことはないんだ、ということを教えられてきました。そして、自分の人生の選択の結果を引き受けることは、結局は自分にしかできないんです。次女が亡くなってからは、今は自分の余生だと思っています。だから、いつ自分の命が終わっても、後悔しない生き方をしたいと思いました。

 

あと、私は何かトラブルが起きても「これは成功の途中」だと思っているんです。今までもピンチは何度もありましたが、そのたびに不思議と助けてくれるご縁が現れて、ここまで来られました。次女が応援してくれているのだといつも感じますし、これからも自分の命を歩いていきたい。そして、いつか空の上で次女と会えたときに「頑張ったね」と言ってもらえたらうれしいですね。

 

NPO法人キープ・ママ・スマイリングのメンバー
ご縁がご縁を呼んで集まった心強い仲間とともに(中央が光原さん)

 

PROFILE 光原ゆきさん

みつはら・ゆき。認定NPO法人キープ・ママ・スマイリング理事長。1996年に一橋大学卒業後、株式会社リクルートに入社。長女と次女の入院の付き添い、そして次女を亡くした経験から、2014年に現団体を設立。付き添う親の環境改善のために食の支援のほか、病気の子どもと付き添い家族の実態調査を行う。2023年にこども家庭庁らに提出した要望書は、2024年度診療報酬改定に影響を与えるなど、制度改善についても活動を行う。

取材・文/桐田さえ 写真提供/光原ゆき