── フジテレビを退社したきっかけをうかがってもいいですか。

 

近藤さん:20代後半になると、女性アナウンサーは仕事がだんだん減ってくるんです。若いアナウンサーに仕事が集中して、ちやほやされる。私も若いうちはそうでした。そのおかげで日本中のいろいろな現場へ行けて楽しかったし、お給料もたくさんもらえました。でも、キャリアアップしているかといわれると、していない。これは私のせいだけではなくて、テレビ業界の構造的な問題でした。

 

アナウンサーという専門職で採用されたにもかかわらず、辞令でまったく違う「非現場」に配属されることもあります。新しい部署で頑張ろうと思っても、みんなからはすでに遅れているわけですよね。バブル絶頂期に燦然と輝いていたキー局アナウンサーの「光と影」です。「女子アナ」という枠に私たちもしがみつき、会社もそれをメディアで売っていた。そういう時代でした。

 

最初の結婚が決まっていましたし、会社も私を引き留めることはしませんでした。私が辞めても会社は困らないし、私も会社に感謝していましたから、まさに円満退社でした。

 

近藤サト
局アナ2年目、ニューヨークのロケで

── 今もフリーランスの道を選ぶ局アナの方はいらっしゃいます。

 

近藤さん:テレビの世界はあまり変わっていないと思います。でも、アナウンサーのモチベーションや考え方は変わったと思いますよ。キャリア形成のために、よりよい人生を歩んでいくために、何をすればいいのかを今の人たちはちゃんと考えている。私たちのころは、フリーランスになれば収入が増える「フリー3倍の法則」なんていうことがまことしやかに言われていましたけれど、フリーアナウンサーは飽和状態です。今の人たちはそんなのんきなことは考えていません。会社にいながら資格を取る人も多いですし、趣味を極めて仕事のきっかけにする人も増えていくと思います。