あらゆることを同時進行して時間をためる

洗濯機を回している間に掃除機をかける。カレーを煮込んでいる間にサラダを作る。一石二鳥の「同時進行」は時間にケチな私のキーワード。いろいろなところで同時進行させると、小さな時間がたまって大きな時間になります。

 

田中ナオミさんの自宅の鍋
クリステルの鍋はふたと底がフラットなので、調理途中の鍋を上にのせられて数日分の下ごしらえが同時にできる

同時進行は特別なワザではありません。たとえば、先ほどの洗濯機を回す+掃除機をかける間に、お湯を沸かしたり豆腐の水きりをしたり、ほったらかしOKの家事を上手く組み合わせると、ふたつ以上の同時進行が可能になります。

 

すべて手作業にこだわる必要はないので、食洗機や炊飯器(タイマー予約も可能)を使っている人は、同時進行できることはさらに増えます。

 

夜寝ている間や外出時にもできる同時進行はあります。ほったらかしのなかでも、火を使わずに(見守る必要がなく)時間をかけたほうがいい作業です。

 

たとえば、汚れもののつけ置き洗い、洗濯物の室内干し、干し野菜、お茶やコーヒー、紅茶の水出し、だしの抽出、長時間の漬け込み調理、瓶詰めなどの季節の仕込みもの、パンのオーバーナイト発酵…などなど。無意識に行っていることが、実は同時進行になっていることもたくさんあります。

 

だし
昆布やしいたけを水に浸して冷蔵庫に置けば、あとは時間がおいしくしてくれるだし。外出時でも就寝中でも安心して放っておけます

少しだけ意識して同時進行を積み重ねていくと、ちょうどよいタイミングで終わったときに、「よし!」と達成感を得られてうれしくなります。上手くいかないときには少しやり方を変えたり、ゲーム感覚で楽しめるのもいいところ。

 

あらゆることを同時進行するには、少し先を読み、段取りよく仕込んでいく想像力が必要です。その日だけでなく翌日、翌々日、その週のこと、さらには翌週のことも見据えて組み込めると、家事が驚くくらいぐるぐる回っておもしろくなります。

 

PROFILE 田中ナオミさん

たなか・なおみ。一級建築士、NPO法人家づくりの会会員、一般社団法人住宅医協会認定住宅医。1963年大阪府生まれ、1965年から高校卒業まで徳島県にて過ごす。女子美術大学短期大学部造形学科卒業後、エヌ建築デザイン事務所、藍設計室を経て、1999年「田中ナオミアトリエ一級建築士事務所」を設立。住み手を笑顔にする住宅を一筋に手がける住宅設計者として活躍。昨年12月に新刊『60歳からの暮らしがラクになる住まいの作り方』を上梓。

 

取材・文/岩越千帆(smile editors) 撮影/鈴木真貴