親が「子どもの結婚を阻止する」ケースも
── 実際のケースでいうと?
植草さん:50歳過ぎの男性で、もともとほかの相談所に15年いて、こちらに来られた方がいました。15年も相談所にいるのは不幸だから、こちらに入ったからには結婚していただきますよ、と言ってお預かりしたんですけど…。お仕事は工場勤務で年収400万円。月曜〜木曜は寮で暮らし、金曜・土曜・日曜は実家で親御さんと一緒に過ごしていると言います。料理もできなければ、掃除もできない。しゃべり方もぼそぼそで、女性慣れしていないからすごく大変でしたね。
たとえば、スタバでお茶すると女性と別々の場所に並ぶんです。別会計です。だからお見合いの特訓もしたし、いろいろなマナーも教えて、なんとか交際に入れるようになりました。でも、あるとき、お子さんがいらっしゃる女性を紹介したら、彼のお母さまが憤慨されました。女性は39歳でお子さんが小学生です。男性にとっては悪くないお相手でした。だけど、「子連れの女なんか紹介するような仲人がいるところは今日中に辞めてきなさい!」と言われたと、80歳過ぎの母親の言うがままに退会されていきました。
── そうなるとかなり結婚は遠そうですね。会員側に問題があり、相談所の方から退会を促すようなケースはありますか?
植草さん:やはりあります。やっかいなのが不倫の経験者。貞操観念がないから、ルールを守らないんですよね。結婚に持ち込むために相手をつなぎ止めようとして、簡単に肉体関係を持ってしまったりする。結婚相談所では、成婚するまで肉体関係は禁止です。だからそれは成婚とみなされ、成婚退会となります。
また、そこまでいかなくても、お相手に望むものが多く難しい場合が多い。ある方は20代、30代とずっと不倫をしていた女性で、30代後半になってそろそろ結婚しようという気になって当社にやって来た。でも、どんなにいい条件の男性をご紹介しても、うんとは言わない。よくよく聞いてみると、「ほめてくれない」と言うんです。ずっとチヤホヤされた生き方しかしてこなかったので、甘い言葉がないとダメなんですよね。だけど「今日もかわいいね」「その洋服似合うね」なんて、ふつうはなかなか言いませんから。
「優しさ」や「お金持ち」よりも重視されるのは…
── 結婚できない男女に共通するものは?最近の傾向は何かありますか?
植草さん:以前より衛生面が重視されるようになってきて、清潔感はもう当たり前の条件になっています。実際の人間は毛穴があって、そこから汗が出るし、白髪だってある。でも、男性も毛穴が目立っていてはダメだし、大きなシミがあってもダメだという。
みなさんバーチャルなんですよね。アイドルが好きとか、アニメの主役が好きとか、韓流ドラマに出てくるような男性がいいとか。恋愛経験がない人も多いので、そのぶんイマジネーションが膨らんでしまうんです。昔より顔に特化しているのを感じます。だから30人お相手をご用意しても、顔、顔、顔で1人しか選ばなかったりする。0人というケースもあります。いままで結婚できなかったのはそのせいで、外見だけですべてジャッジしているから。顔へのこだわりをまず外さないといけません。
みなさん顔ばかり見て、中身を見ない。見ないのではなくて、人を見る力がないのでしょう。考える力がなくなって、みんな視覚で見てしまう。たとえばお菓子にかわいいラッピングがされていたらおいしそうって思うけど、新聞紙で包んである焼き芋を見たらおいしそうとは思わなかったりする。でも実際に食べてみたら、焼き芋のほうがおいしかったりもする。だから私にいわせれば、顔はついていればいい。要は顔ではない、中身を見ることが大事だ、ということを伝えています。
PROFILE 植草美幸さん
うえくさ・みゆき。1995年、アパレル業界に特化したコンサルティング会社・株式会社エムエスピーを創業。2009年に結婚相談業へ事業転換。結婚相談所マリーミーを立ち上げ、婚活現場の最前線で成婚カップルを輩出している。
取材・文/小野寺悦子 写真提供/マリーミー