世界のマイナーな駅で途中下車し、アポなし旅をする人気番組『迷宮グルメ異郷の駅前食堂』(BS朝日)で23か国を旅したお笑い芸人・スギちゃん。ジェスチャーを交えて果敢に現地の人とふれあう姿が人気を呼びました。ロケは通訳なしのため、何とか思いを伝えようと「現地の人との真剣勝負だった」と振り返ります。(全4回中の3回)
日本語で話しかけたら拒絶され「せめて挨拶は覚えようと」
── 2年間レギュラーを務めていた『迷宮グルメ 異郷の駅前食堂』(BS朝日)が今月最終回を迎えました。カタコトの現地語で果敢に人に話しかける姿が印象的でした。
スギちゃん:本当に英語もできないし、実は最初は日本語で現地の人に話しかけていたんですよ。でも、どの国でも日本語で話しかけられたら、向こうから拒絶されるんです。うまくいかなくて、こっちもオドオドして怯えちゃって。
それでスタッフさんと「どうしようか」と話し合うなかで、基本的な挨拶や「ありがとう」「おいしい」ぐらいは覚えたほうがいいんじゃないか、となったんです。そのやり方でやってみたら、相手の反応がガラッと変わりました。日本語で話しかけても、まず第一声で相手が笑顔にならないんですよ。知らない国の言葉で話しかけられたら、ちょっと怖いじゃないですか。
それで、まずその国の言葉で挨拶するようにしたら、反応が全然変わりました。そこから人と話すのが楽しくなったんです。やっぱり俺も異国のいろいろなものに興味があるんで「これは何?」っていろいろ話しかけてみて。言葉はわからないんですけど、ジェスチャーでなんとなくわかるんです。それでなんとなく会話が成立するようになって、それからはおもしろかったですね。
── オンエアを見ると、実は噛み合ってない会話もあって(笑)、そこもおもしろかったです。
スギちゃん:俺は現場では何となく相手が言っていることを理解したつもりになってるんですけど、オンエアを見て、相手は実は全然違うことを言っていたんだなってわかったりして。それで初めて答え合わせする感じでした。
── 通訳さんは同行しないんですか?
スギちゃん:コーディネーターさんはいちおう同行するんですが、僕にはまったく通訳しないんですよ。現地の人も俺と話しても伝わらないから「誰か言葉が伝わるやつはいないのか」と現地コーディネーターさんに話しかけるんですけど、その人は知らん顔(笑)。だから、現地の人もあきらめて、俺と話してくれるんです。もうつねに相手と俺との真剣勝負でしたね。本当に伝えたいことを、なんとかして相手に伝えようっていう。
── あまりにフランクに現地の人に話しかけていくので、いち視聴者としては「チップ取られたり、騙されたりしないのかな」と心配に思っていました。
スギちゃん:言葉が通じなかったりすると「怖い」っていうイメージになっちゃいますよね。ただ、俺が思ったのは、どこの国も基本的にいい人しかいない。たしかにスリとか泥棒するような人もいますけど、それは日本も同じだし。
だって、こんな見ず知らずのやつにね、わざわざ道案内してくれたり、話しかけてくれたりするんですよ。しかも、こっちは相手にカメラを向けているのに。うっとうしいじゃないですか、急に話しかけたら。それでも、いろいろ教えてくれたり、やさしくしてくれたり。そういうことに感謝するようになってからは、現地の人に受け入れられやすい雰囲気になっていたのかもしれないですね。そういう変化は自分でも感じます。
たしかに国によっては「案内したからチップくれ」っていう人もいましたけど、わかりやすくていいんじゃないですかね。相手の困りごとのめんどうを見てお金をもらうんだから。それは全然いいと思ってたから、話しかけられるのを拒絶するより、乗っかっていこうとやっていました。だから、撮影はずっと楽しかったです。