登録数52万人の人気YouTuberで、一級建築士の資格も持ついけちゃん。建築事務所に勤務しながら、現在は秋田と東京の二拠点生活を送っています。いったいどんなきっかけがあったのでしょうか。(全3回中の2回)
「地元の人ってこんなに猛烈に応援してくれるんだ」
── 秋田と東京の二拠点生活を始めることになったきっかけを教えてください。
いけちゃん:あるとき、秋田県の東成瀬村にある企業から、インフルエンサーとして決算報告会のMCをやってほしいと依頼があったんです。そのつながりから、行政から村の地域おこし協力隊として地域創生をやりませんかと声をかけていただきました。
最初はやっぱり迷って、すぐに返答できなかったのですが、いろいろ考えるうちに、古民家の改修を手がけてみたいって思いついて。古民家改修のプロセスをYouTubeのコンテンツとして配信していくのは、きっと関東近県でもできると思うけど、せっかくなら地元に戻ってやってみようと考えたんです。
── 地元に戻ることに抵抗はなかったですか?
いけちゃん:いやそれが、地元の人ってこんなに猛烈に応援してくれるんだってことに気づいちゃって(笑)。地元では、YouTuberになるような若者は上京したら絶対に戻ってこないって思われていたみたいで。それもあってか、私が秋田に戻ったらみんなすごく喜んでくれたんです。
── 地元の方に歓迎されたのですね。
いけちゃん:古民家を改修するときにも、行政の方が一生懸命「助成金を調べてみるね」と応援してくれて。たとえば埼玉のほうが距離的には近いけど、こんなふうに地域の人たちに応援されながらYouTubeをやっていくのもいいかもって。ただ、東京から片道6時間以上かかるのは、やっぱりネックですけどね。
── そんなきっかけから二拠点生活が始まったわけですね。
いけちゃん:そうなんです。私は旅も好きだし、2か所を行き来しながら活動したほうが気持ちが上がりそうだなと思って。それに、県南地域の東成瀬村は、私の地元・秋田市ともそれほど遠くはない距離なんです。実家にときどき帰れば親孝行にもなると思うので、そういう意味でも二拠点生活は悪くはないかなって。
地方は移動がとにかく大変「これが同じ日本なのかな」
── 先日、政府が東京23区に在住・通勤する女性が地方へ移住する場合に支援金を支給する政策を検討していることを発表し、話題になりました。実際に、東京と秋田を行き来しているいけちゃんさんにとって、地方暮らしのメリット、デメリットはどのように感じていますか。
いけちゃん:私が住んでいる村は、人口が2500人くらいで、村に病院が一軒もないような地域。病院やスーパーも、隣町まで行かなければありません。外食をするなら、カフェが1軒と役場内の食堂がかろうじて1軒。それくらい辺鄙な場所なんです。秋田市と比べても、格段に田舎ですし。それでも、限界集落(地域人口の半数が65歳以上の集落)と呼ばれている場所には入らないそうです。それに対して、私がふだん暮らしているのは東京の23区内。日本で一番人口が密集している場所といっても過言ではないですよね。ときには、午前中は秋田にいて午後は渋谷、なんてこともあるのですが、景色が違いすぎて「これが同じ日本なのかな」っていう気持ちになります。
二拠点生活を始めたことで、日本の都市部と地方の暮らしはこんなにも違うんだって実感する機会が増えました。たとえば東京で「ご飯が食べたい」って思ったら、本当にいろんな選択肢がありますよね。車の運転ができなくたって、公共の交通機関が発達しているからどこへでも行けるし。人が多すぎてうるさいとか、家賃が高いというデメリットはありますけど。いっぽうで東成瀬村は、本当に静かで、空気が綺麗で、水がおいしいけれど、移動するのが本当に大変…。
── YouTubeでは、自動車学校に通っている様子を紹介していましたね。
いけちゃん:村で生活するためには免許は必須なんですよ。たとえば、スーパーが隣町にしかないのに、バスの本数が1日1本しかない。これは暮らしていくうえで、ものすごいデメリットです。そこまで深く考えずに二拠点生活を始めてしまったので(苦笑)、秋田で暮らし始めてようやく、車がないとヤバいじゃん!って気づいて。
── 免許を持っていなかったときは、どのように暮らしていましたか?
いけちゃん:今年の4月に移住してから1か月ほどは、役場の方が毎回、車で隣町まで迎えに来てくれました。でも、スーパーに行くたびに役場の方に送迎をお願いするのは、さすがに申し訳ないなって思い始めて。ちょっとスーパーに行きたいなって思ったときに、毎回役場の方を呼び出すわけにはいかないじゃないですか。それで、これはもう自分が免許を取るしかないぞって。免許を急いで取って、車ももう買いましたよ。
── 行動力がありますね。
いけちゃん:いや、そうしないと暮らしていくのにそうとう不便だったので(笑)。今は月末に地元に帰ることが多いですが、今後はもっと古民家の改修を進めたいので、もう少し長めに滞在したいんです。でも、東京で別の仕事が入ることもあり、なかなか1か月じっくりと村にいられないのですが。
── 二拠点生活での今後の目標はありますか。
いけちゃん:私が二拠点生活をずっと続けられるかどうかわからないので、いつかは地域おこしの方に古民家に住んでもらって、地域おこしを継続してもらうのが理想ですね。たとえば、1階でカフェとか集える場所を作ってもらえたら、最高です。
PROFILE いけちゃん
1997年、秋田県生まれ。登録者数 52万人、動画の総再生回数1億630万回の人気YouTuber。グラドルとしても活動しながら一級建築士の資格を取得し、建築事務所にも勤務している。
取材・文/池守りぜね 写真提供/いけちゃん