アメリカのアニメ『TENKO and the GUARDIANS ofTHE MAGIC』のイメージを守るため契約上、全身100箇所にも及ぶ制約があるというプリンセス天功さん。前髪の長さやまつ毛の向きまで決められている生活とは── 。(全5回中の2回)
常にボディガードつきの生活で
── アイドル歌手「朝風まり」時代を経て、二代目・引田天功を襲名し、イリュージョニストの道に進まれました。その後は、海外に拠点を移し、世界的なイリュージョニストとして活躍されています。アメリカ進出のきっかけはなんだったのですか?
天功さん:二代目・引田天功を襲名して、日本で長期公演をやっていたときに、アメリカのメジャーテレビ局やラスベガスのプロデューサーの人たちが見に来て、「アメリカで活躍する方がいい」と誘われて。そこからアメリカに移って、NBC放送の番組で準レギュラーいただいたり、「TENKO」としてアニメーションになったり、バービードールの人形が発売されたりと、生活が一変しましたね。
── アメリカでは、PRINCESS TENKOのアニメのイメージを守るために、ものすごく細かい制約がたくさんあると聞きました。
天功さん:全身100か所に及ぶ細かい制約が定められています。積み上げると1メールくらいの書類の量の紙に、公証役場で1枚1枚サインしました。守らないと訴えられて、莫大な賠償金を支払うことになってしまいます。
年齢は24歳の設定で、サザエさんと同じ年(笑)。身長や体重も定められていて、太っても痩せてもいけない。髪の毛は黒髪のストレートで、前髪の長さやまつ毛の向きまで決められています。契約当初は、まだ決められた身長に達していなかったから、高めのハイヒールを履いて調整していましたけれど、途中から契約している身長よりもちょっと伸びちゃって焦りましたね。
電車に乗るのも、コンビニやスーパーに行くのもダメ。いつもボディーガードつきの行動になります。すべて終身契約なので、死ぬまで守らなくてはいけないんです。今、アニメの権利はディズニー社が持っているので、契約がより厳しくなって、子どもの夢を壊さないような言動や振る舞いが求められますね。アメリカではジェスチャーつきで会話をします。全世界いろんなところに行って公演するときは、その国の言葉でしゃべらないとダメなんです。だから、覚えるのが大変でした。声のトーンも決められていて、話し声はミステリアスでなければいけないので、アメリカにいるときは、オクターブ下の低い声でしゃべります。
── すごいですね…。なかでも、守るのが大変だった契約ってなんですか?
天功さん:ストレートの黒髪でいなくてはいけないことでしょうか。日本で金髪が流行っていたときに金髪にしてテレビに出たら、アメリカですぐに国際裁判にかけられて。日本の番組だから大丈夫かなと思ったのですけどね。慌てて黒く染めなおして、「あれはカツラでした」と。恋愛相手も契約で決まっています。アニメーションの中で私の恋人役が金髪ブルーアイの人なので、恋人を作るなら金髪ブルーアイ限定になっています。
── そこまでライフスタイルが決められていると、まるで自由がなく、つらくなったりしませんか?
天功さん:たしかに、嫌だなと思うときもありましたよ。でも、もともとそういう契約を自分でしていますし、もう慣れてしまいましたね。
── 自分なんだけど、自分じゃない、みたいな感覚があるのですか?
天功さん:そうですね。TENKOというキャラクターだから、すべて契約に則って行動するという感じです。日本のエンターテイメントでは、そういう契約をされている方はいないと思いますが、アメリカではスーパーモデルなど、かなり細かく契約が決められています。