芸人から役者に転身した元アジアンの隅田美保さん。日常のささいなできごとですら、演技に活かせるそう。役者という仕事をとおして、隅田さんが求めているものとは?(全2回中の2回)

役者になって「性格が変わった」わけではなく

芸人時代、舞台に立つ元アジアン隅田美保さん
芸人時代の舞台写真。2012年、吉本百年物語『舶来上等、どうでっか?』助っ人として大阪から呼び寄せられたお茶子のお黒役

── 2021年のアジアン解散後、役者に転身して、実感していることは?

 

隅田さん:生きていたら、めちゃくちゃいろんなことがありますが、芸人時代のことも、それより前の経験や記憶も、すべて芝居で活かせるのはすごいことだと思います。「つらい」「嬉しい」というはっきりした感情や大きな出来事だけでなく、とるにたらない気持ちもすべて演技に活かせるんです。たとえば梅雨入りして雨に降られ、ジメジメして髪型がぺしゃんとなるというようなことですら。だから、役者業はムダがないんですよ。しんどいことやつらいことも、全部、仕事でプラスになりますから、ポジティブにとらえています。

 

── 経験にムダがない…。これは、芸人時代と大きく異なる点ですか?

 

隅田さん:お笑いのときも、自分の身に起きた出来事をエピソードとしてしゃべることができますが、役者は全部、芝居に使えます。この感情を覚えていたら、いつか必要な役が来たときに活かせるはず、ということばかりです。「雨」という設定で、雨音がザーッとBGMで流れたときにどんなリアクションや表現をするか。雨音だけ聞こえて、自分は傘を持っていなければ、どんな動きをするか。そんなお芝居が要求されたときに、思い出して演じられます。ふだんタバコを吸うわけではないですが、喫煙者の役なら実際にタバコをくわえてみたりしますもん。経験しないと嘘になっちゃうから。

 

── 役者さんは、日常のすべてから学ぶんですね。ものすごく観察していそうです。

 

隅田さん:人間観察も好きですね。この人って、こうしゃべってこう考えているんだろうな、など気づいたことは、親しい間柄なら本人に言うこともあります。

 

元アジアンの隅田美保さん
前髪で遊ぶ隈田さん

── 役者転身後、「性格が変わった」とか、自分の意外な一面に気づいた経験はありますか?

 

隅田さん:性格はとくに変わりませんが、自分の性格がより出てきましたね。他人をこんなに想う一面があったんだと、自分でも驚くくらいです。でも、これはコロナ禍で身近な人が亡くなったりしたのも影響してるかな。この経験から考えたことは、口に出して相手に伝えないと、と強く思いました。大切で好きな人にはその瞬間に好きなこと、イヤなことも全部伝えるようにしています。それがイヤだという人が、私から離れていったりすることももちろんありましたが…。やはり、コロナ禍は私だけでなく、みんな考える時間が増えましたよね、あの時間を過ごしたのは大きかったです。