料理家の黄川田としえさん。17歳の娘・莉子さんはテニス選手として世界大会に挑戦中で、ジュニアアスリートを支えるごはんづくりの様子がSNSなどでも話題です。スポーツに励む子を持つ親にとって役立つヒントが詰まった具体的なサポート方法について伺いました。(全2回中の2回)
世界的にプロとして活躍できるスポーツをさせたい
── 娘の莉子さんはテニスのジュニアアスリートとして活躍中です。テニスを始めたきっかけは何でしたか?
黄川田さん:莉子は幼い頃から器用で、運動全般が得意でした。足腰がしっかりしていて走るのも速かったので、世界的にプロとして活躍の場があるようなスポーツを娘にさせたいという点において、莉子が小さいころから夫婦の意見が一致していました。
テニスを始めたのは小学生になってからです。保育園時代は伸び伸びと遊ばせていて、何も習い事をさせていませんでした。というのも、何のスポーツにするかは慎重に選んだほうがいいと思ったためで、そのあいだ親のほうでこれから長く続けていけるような、さらに世界的に活躍できるのはどんなスポーツなのかをいろいろと調べていました。
「女の子でも、頑張ればプロにもなれるようなスポーツを…」と探していたある日、テニスがいいんじゃないかと、ふと思いました。フィジカルが強く、足が速い娘には合っているんじゃないかと。それで小学生になった莉子に「テニスやってみる?」と聞いたら「やってみたい!」と本人も言い、体験に行ったらすごく楽しいと。すぐにテニススクールに入ることにしました。
── 現在17歳、プロテニス選手を目指す莉子さんですが、テニスを始めたころからいずれプロにと意識していたのですか?
黄川田さん:頭の片隅にはありましたが、私自身はテニス経験がなかったですし、テニスで成績を上げてプロ選手になるにはどうしたらいいかというのを、まったくわかっていませんでした。ただ、続けるうちに「もっとテニスをやりたい」「もっとボールを打ちたい」と莉子が言ってきたので、レッスンの回数を増やそうと思いました。
そこで「アカデミー」という、全国大会を目指す強化選手が通うクラスがあると初めて知りました。それまでのスクールだと、週1回1時間の練習だったのが、アカデミーになると週4~5回、各2時間は練習できるので、たくさんテニスをすることができます。アカデミーに入るにはテストが必要だったので5日ほどテストに通い、合格することができました。小学校4年生になるころでした。
アカデミーに入ってテニスの本当の厳しさを知った
── そこでテニスのジュニアアスリートへの第一歩を踏み出したのですね。
黄川田さん:そうです。でも、アカデミークラスに入れて喜んでいたのも束の間、テニスの本当の厳しさをそこで知りました。とにかく毎週のように試合の回数をこなして勝ってポイントを稼ぎ、ランキングを上げていかなくてはならないのがテニスだったんです。
ジュニアもプロも、試合に出ていないとランキングが上がらない。ランキングが上がらないと全国大会に行けない。試合数をこなすこと、ランキングを上げることが最も重要でした。そしてアカデミーにいたのは、全国大会を目指している子ばかりでした。まず公認大会、東京大会、関東大会、そして全国大会とランキングを上げながら勝ち進んでいかなくてはならないのですが、全国大会なんて当時は雲の上の存在でした。
娘がアカデミークラスに入ってからは、親は送迎に明け暮れる日々になりました。当時、私は食育のイベント仕事がたくさん入っていたのですが、テニスの試合のある週末の仕事はいったん諦めて、平日にできる撮影やレシピ考案をメインにシフトしました。莉子はテニスをすごく楽しんで夢中でやっていたので、親としてもランキングを上げるためにできることはしたいと思ったんです。試合会場は関東エリア全体が対象になっていたため、とても子どもひとりで行けるような場所ではなく、まずは送迎が重要。どのご家庭も両親のどちらかが必ず送迎に来ていて、毎週末のように顔を合わせるような状況が高校2年生まで続きました。
── 莉子さんは、選手として順調にランキングが上がっていったのでしょうか?
黄川田さん:そんなことはないです。小学生の間は関東大会にも出られませんでした。中学生になってから関東大会に出られるようになり、団体戦で全国優勝するまでに成長しました。ただ、中学2年生のころから新型コロナウィルスが流行し、全国大会の開催自体がなくなってしまって…。一番実力が伸びて成長していた時期に個人の成績が上げられなかったのは残念でした。
高校生になったころにはインターハイと全日本ジュニア大会に出場することができましたし、高校2年生のタイミングで大人が参加する全日本選手権大会にも出場するようになりました。そして2024年に入ってから全豪オープンの推薦枠をかけた試合で優勝し、グランドスラムのひとつである全豪オープンジュニア本戦に出場。その後の試合で大人の世界ランクを獲得しました。現在高校3年生ですが、高校生のあいだに急成長して、急に世界が近づいたような印象で親としても驚いています。