つい口を出したくなる気持ちをグッとこらえて

2024年3月、全豪オープンジュニア本戦に出場した黄川田莉子さんと両親
2024年3月、全豪オープンジュニア本戦に出場。親子3人での記念ショット

── 食事面では黄川田さんがジュニアアスリートフードについて学んでサポートされていたそうですが、食事以外の部分は元Jリーグの選手だったご主人からも元アスリートとしてアドバイスがあったのでしょうか?

 

黄川田さん:そうですね。休養や睡眠について、心のケアについては夫のほうが詳しいです。心のケアというのは、たとえばコーチとの相性や、試合後の親の声かけなどです。幸い娘は信頼できる指導者と巡り合えたのですが、やはり個人スポーツなので、コーチとの相性やストレスを感じていないかというのは気にしていました。心の中は見えない部分ですし、テニスが好きで楽しく取り組むのが一番大切だと夫も言っていたので「練習に行きたくないと思っていないかな、楽しめているかな」というのは常に様子をうかがっていました。

 

── たしかに指導者との相性やメンタルの部分も大切ですね。

 

黄川田さん:そうですね。でも、指導者と選手の関係もですが、実は親子関係もとても大切です。

 

テニスは送迎などで親がつきっきりになるため親子関係が近く、そこがこじれるとプレイにも影響が出るんです。試合に負けて責めたり、軽い気持ちで「なんであそこができなかったの?」などと親が口を出してしまったりすると、帰りの車中が重い雰囲気になってしまいます。その結果、子どもが「テニス楽しくないな」「試合楽しくないな」「もうやりたくないな」という思考になってしまったら夢の実現からは遠のいてしまいますよね。そのあたりは口を出したい気持ちをグッと抑えて自分もコントロールするよう気をつけていました。

 

ただ、伝えるべきこと、注意すべきことはちゃんと伝えたほうがいいので、責めるような言い方はせず、一方的にならないよう会話の中で愛をもって伝えるようにしていました。もちろん失敗もたくさんして、言いすぎた、感情的になってしまった、という後悔をしたことは何度もありますが、繰り返すうちに反省しながら親のほうも学んでいった感じです。

 

── つい言いたくなってしまう気持ち、子育て中の親として共感しかありません。親の方も自分との戦いがありますね。

 

黄川田さん:葛藤の連続です(笑)。常に「どういう言い方をしたら伝わるか」と繰り返し考えていましたし、子育てを通して自分も成長させてもらいました。もちろんスポーツをしている子ではなくても、会話やコミュニケーションを通して親子の関係性を築くというのは大切だと思います。

 

料理家・黄川田としえさんと娘の莉子さん
黄川田さんと娘の莉子さん

 

PROFILE 黄川田としえさん

料理家。子ども向けの料理教室や食育ワークショップを開催する「tottorante」主宰。のべ5000人以上の子どもたちに料理を教えてきた。著書に、『ホットプレートひとつでごちそうごはんができちゃった100』(主婦の友社)など。夫は元Jリーガーで、一男一女がいる。娘の莉子さんはグランドスラム出場を目指して国際大会に挑戦中。

取材・文/富田夏子 写真提供/黄川田としえ