子どもに「どうして税金を納めるの?」「税金って何に使われているの?」と聞かれたらどう答えますか? 税金を納めることは日本国憲法で国民の義務と定められていますが、なぜ“義務”なのかをきちんと説明するのはなかなか難しいもの。そこで、元国税局勤務のお笑い芸人で現役東大生のさんきゅう倉田さんに、私たちの暮らしと税金の関係について教えてもらいました。

税金はみんなで社会を支えるための“会費”

『マンガでわかる! 小学生のくらしと税金&社会保険』より
『マンガでわかる! 小学生のくらしと税金&社会保険』より
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『マンガでわかる! 小学生のくらしと税金&社会保険』より
『マンガでわかる! 小学生のくらしと税金&社会保険』より

まず、国は国民が安心安全に暮らせるように国を運営する義務があります。たとえば、道路をつくったり橋をつくったり、街の安全を守ったりして、だれに対しても平等に安心や安全を提供して、国民の生活を守らなくてはなりません。

 

でも、これらを実行するにはものすごくお金がかかりますよね。そして、これらは一部の人だけではなくて、みんなが必要とするものです。みんなのために必要なもののために、みんなから集めるお金が「税金」です。いわば、税金は国というグループを続けていくために国民が払う“会費”のようなものなのです。

 

当たり前のようにある警察や救急出動、消防活動もみんなから集めた税金で成り立っているサービスです。もし税金がなかったら、ケガをして救急車を呼びたくても、ドロボーを捕まえて欲しい時もお金がかかる世界になってしまい、安心して暮らしていくことができません。だから、税金は私たちの生活とは切っても切り離せない関係なんです。

税金の負担は「公平であること」が大事

平等と公平の違いを示したイラスト
公平は、それぞれの人が「ちょうどいい」と感じられること

みんなで使うもののために出し合うお金なのに、一部の人だけが税金を払ったり、まったく払わない人がいたりしては不満がつのりますよね。なので、税金は国民の義務として、国民全員から集めることになっています。

 

でも、“金額もみんな平等”というわけにはいきません。なぜなら、もし貧しい人からお金持ちと同じように税金を取ってしまったら、手元にお金が残らず、人間らしい生活ができなくなってしまいます。貧富の差がどんどん広がり、社会の秩序は保たれなくなるでしょう。

 

だれもが健康で人間らしい生活を送るために、そして、貧富の差を縮めるためにも、お金がある人からは多く、貧しい人からは少なく集める制度にして、公平を保っているのです。所得税が累進課税制度になっているのもそのためです。

税金の種類を多くして、払える人を増やしている

税金の種類を表すイメージイラスト
税金の種類を増やすことで、特定の人たちだけに負担がかからないように

税金は負担する能力がある人が払うようになっていて、税の種類を増やして細かい条件を決めることで、たくさんの人が税金を負担できるようにしています。たとえば、働いている人は所得税を払ったり、土地や家などの不動産を持っている人は固定資産税を払ったり、ものを買った人は消費税を払ったり。このように、税金の種類を多くすることで、特定の人たちだけに負担がかからないようにしているのです。

 

また、昔と今とでは生活スタイルがどんどん変わって社会も複雑になっています。時代に合わせて税の制度を細かくすることで、ズルをして税金を払わない人が出てこないよう、国は税の種類を多くしたり条件を複雑にしたりして、みんなに確実に税を納めてもらっています。種類が多いとそのぶん色々なことが複雑になりますが、簡単な仕組みにすることよりも、公平性をもっとも大事にしている、というわけです。


税制度は、みんなが必要なものはみんなでお金を出し合って、一緒に使おうという制度。長い歴史の中で、人間が編み出した合理的なシステムなんです。税のことを学ぶと、世の中の仕組みが見えて、矛盾にも気づけるようになりますよ。

 

PROFILE さんきゅう倉田さん

さんきゅう・くらた。1985年生まれ。芸人。大学卒業後、東京国税局に入局。退職後、吉本興業の養成所NSC吉本総合芸能学院に入学し、芸人となる。2023年に東京大学文科二類に合格し、現在、二度目の大学生活を送っている。芸人と学生の両立生活を送りながら、執筆や講演活動も精力的に行う。近著に『マンガでわかる! 小学生のくらしと税金&社会保険』(主婦と生活社)がある。

 

イラスト/©️なのなのな