YAWARAちゃんの呼び方は今

谷亮子
取材当日「生姜焼き」のお弁当を作ってきたと語る谷さん

── 気合というか、根性といいますか。また、谷さんといえば、おでこの上で髪の毛を結んでいる姿もとても印象的でした。

 

谷さん:道場にたくさんの人がいたので、母が私に目印がわりに赤いリボンを結んでくれたんです。前髪を上げて結んでいると意外と目立つらしく、小柄な私でも「あそこにいる!」ってすぐわかるように。髪型もボブカットって言うんですか?あの髪型は私が小学生から大学生になるくらいまで母が家でずっと切ってくれてたんですよ。髪を切りに行く時間もなかったので。小学生の頃、試合で勝つようになると周りの女の子が「私も亮子ちゃんみたいになりたい!亮子ちゃんと同じ髪型がいい!」と言って、母が友達の髪の毛もカットした時期があって、道場ではみんなでデコ出して、同じ髪型になって練習してました(笑)。

 

── (笑)。ちなみに勝負によってヘアゴムの色を変えることはありましたか?

 

谷さん:赤だと優勝していたんですよ。気分転換に今日は違う色にしてみたら負けてしまうとか。中学3年生のときに福岡国際女子柔道選手権という、私の柔道人生を180度変えたといえるくらい大きな大会があったんですけど、そこで優勝したときも赤でしたね。ヘアゴムに関しては、世界中のファンの方々がファンレターと一緒にゴムを送ってくださって、たぶん200種類以上あるかな。リボンとか金のラメつきとか、リボンの会社の方からも送ってくださって相当数ありましたね。普段からいろいろなゴムをつけていましたが、試合で勝ったときのゴムはずっと使い続けるんですよ。特に赤が多かったですが、オリンピックによって色を変えたりしていました。

 

── 髪型と言えば、漫画『YAWARA!』の主人公、柔(YAWARA)ちゃんも同じ髪型でしたね。

 

谷さん:私は小学生の時から『YAWARA!』を読んでいましたが、主人公のYAWARAちゃんも同じ髪型ですね。漫画のYAWARAちゃんもオリンピックで金メダルを目指していて、私も一緒に取りたいなって思いながら読んでました。

 

── 気づけば田村亮子さん=YAWARAちゃんのイメージになって。

 

谷さん:先ほど話した福岡国際女子柔道選手権で世界チャンピオンを破って優勝したときに、新聞やメディアに「地でいくYAWARAちゃん」と出ていて、そこからニックネームYAWARAちゃんって呼んでもらえるようになりました。

 

── 今でも「YAWARAちゃん」って呼ばれることはありますか?

 

谷さん:ありますね。「YAWARAちゃん」とか、最近は「YAWARAさん」も多くて(笑)。

 

── 呼び方も大人になっているという(笑)。

 

谷さん:そうです!でも基本的に試合で戦っていた時のイメージが強いようで「YAWARAちゃん」が多いですかね。私は小学校5年生のときにオリンピックに出たいと思って、世界柔道選手権やオリンピックにも出ることができましたが、イメージは当時のまま。髪型も全体の印象もずっとYAWARAちゃんのままでイメージが止まっている方もたくさんいます。今は現役を離れていますが、「YAWARAちゃん、あのとき観てました!」とおっしゃっていただくこともあって、逆に勇気づけられることもありますね。

 

PROFILE 谷亮子さん

たに・りょうこ。1975年生まれ福岡県福岡市出身。 全日本体重別選手権大会優勝14回 、 福岡国際女子柔道選手権大会優勝12回 、 世界柔道選手権大会優勝7回(2年に1度開催) 、五輪5大会連続メダリスト 。2003年に谷佳知さんと結婚して2児の母。

 

取材・文/松永怜 写真撮影/北村史成