1985年のデビュー以来、女性ロックバンドの先駆け的存在として40年近く活動を続けるSHOW-YA。そのフロントメンバーであり、ボーカリストを務めているのが、寺田恵子さんです。全員が還暦を迎えてもなお精力的にライブを行うメンバーとの関係性についてお聞きしました。(全3回中の3回)

メンバーとは40年のつき合い「踏みこみすぎないのがコツ」

SHOW-YAメンバーの近影
こう見えて全員還暦越え!メンバー5人が勢揃いしたときの一枚(中央が寺田さん)

── いくつになっても人間関係の悩みはつきないものです。SHOW-YAのメンバーは、40年近く同じメンバーで活動されていますが、長く続いた理由は何だと思いますか?

 

寺田さん:関係が深くなりすぎないからかな。SHOW-YAのメンバーとは、20代の頃から音で繋がっている感じで、音楽の話はするけれどキャッキャしあうような間柄ではなかったんです。元々プライベートは一定の距離を保っているから、メンバーとのやりとりをそっけないと感じたこともなくて。メールやLINEが遅かったり、あっさりしてても気にならないし、逆に長文が送られてくるとびっくりしたりね(笑)。多分、私が一番プライベートをみんなにさらしているかも。ほかの子からプライベートの話はあまり聞かないな。

 

── 信頼関係を保つために、気をつけていたことはありますか。

 

寺田さん:よく「みんなで一丸となって」なんて言うじゃないですか。でも個人的には、それはやめたほうがいいんじゃないかなって。SHOW-YAの場合は、メンバーが5人いるので5つの輪があって、それぞれが少しずつ重なる部分を大事にすればいいだけ。重なるのは全部ではなくて、その小さな輪だけでいいと思うんです。そこだけしっかりと強い絆で結ばれていれば、みんなが同じエネルギーを注げるじゃないですか。全員がひとつの大きな輪に入ろうとするから、物事が難しくなるんだと思うんですよ。

「ラジオの生放送で宣言して」34年前に始めた女だけのロックイベント

── 1987年から不定期で、女性だけのライブイベント『NAONのYAON』を開催していらっしゃいます。これもまた長く続いていますね。始めたきっかけは何でしょうか?

 

寺田さん:『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)のパーソナリティをやっていたときに、“THE ALFEEの野外コンサートに10万人のファンが集まった”っていうニュースが入ってきたんですよ。それを聞いたらやっぱり、勝ちたいって思うじゃないですか(笑)。ラジオの生放送中に「THE ALFEEに負けたくないから、SHOW-YAは女性だけのイベントをやっちゃおう」って宣言して。それを聞いた事務所やレコード会社の人もおもしろいねって賛同してくれたのがきっかけです。

 

代表作『限界LOVERS』がヒットした頃のSHOW-YAメンバー
代表作『限界LOVERS』がヒットした頃

── まだまだ女性主体のバンドが少ない時代で、男社会の雰囲気が強かったのでは?

 

寺田さん:そうですね。『NAONのYAON』を立ち上げた背景には、女性バンドはもちろん、照明や音響を扱うスタッフにも女性が増えたらいいなっていう思いがありました。当時の音楽業界の裏方は、ほとんど男性でしたから。演者だって、バンドでいえばプリンセス プリンセスくらい。だから、アイドルの子たちや音楽番組で一緒になった方々に声をかけて、輪を広げていきました。今の音楽業界をみると本当に女性が増えたなと感じますね。最初の目標はいったん叶ったのかなと思っています。

若い世代からも好かれるのは、年齢を気にしないでつき合うから

── カッコいい先輩への憧れからでしょうか、幅広い層から人気を集めていらっしゃいますね。安室奈美恵さんからも慕われているとか。

 

寺田さん:安室奈美恵ちゃんは、『LOVE LOVE 愛している』(フジテレビ系/1996年~2001年放送)というバラエティ番組にゲストで呼ばれたときに、憧れの人として私を挙げてくれたんです。その流れで私が番組に登場し、安室ちゃんの前で『限界LOVERS』を歌いました。『PROGRESS』(2015年)というアルバムには、安室ちゃんと一緒に歌った『限界LOVERS』が収録されているんです。

 

SHOW-YA 寺田恵子さんの近影
いつまでも若々しい!笑顔が素敵な寺田さん

── 相川七瀬さんやマツコ・デラックスさんも、ファンと公言されています。若い世代に慕われる理由って何だと思いますか?

 

寺田さん:バカなところを隠していないからかな(笑)。基本的に嘘が苦手なので、自分のほうが年上だとか、考えないんです。『NAONのYAON』で10代の子と接する機会があるけれど、一緒に遊んでいる感覚。

 

若い世代のなかには、SHOW-YAの“強い女性”をイメージするビジュアルとサウンドに憧れる部分もあるのかもしれません。私ももちろん「SHOW-YAのボーカルとして、凛としていなければ」っていう気持ちはあるけれど、基本的にはみんなと一緒にキャッキャやるのが好き。だから、一緒に共演したいと言ってもらえたりすると、すごく嬉しいんです。