「どうか間違った道を選ばないで」講演会で伝えたいこととは

── 今年、講演活動を始めたそうですね。講演会で強く伝えたかったメッセージを教えてください。

 

広川さん:「遺族側の経験や思い」とともに、「命を大切にしてほしい」ということと、「命は本人だけのものではない」ということを伝えたいと考え、講演活動を始めました。

 

子どもがおらず、持ち家もなかったわが家は、大きな波のないフラットな日常を送っていました。竜ちゃんとは「何もない日常が一番いいね」とつねづね話していました。だからなおさら、なんでこんなことになってしまったんだろうと、本当にショックで仕方ありません。遺族の立場になって改めて、「何もない毎日が幸せ」ということを実感させられました。

 

竜ちゃんのようにメンタルが弱って、落ち込んでしまう人は少なくないと思います。でも、どうか間違った道を選ばないでほしい。遺族の立場から「命は自分だけのものではないですよ」ということを伝えていきたいと思っています。

 

今年5月、青森県八戸市で開催した講演会の様子
今年5月、青森県八戸市で開催した講演会の様子

── さまざまな困難のなかでも、前向きに歩みを進めている広川さんですが、人生において大切にされていることを教えてください。

 

広川さん:「丁寧に人に接すること」です。子どもの頃から心がけてきましたが、丁寧に人に接していると、困ったときに手を差し伸べてくれる人が必ず現れるんです。竜ちゃんが亡くなった後も、たくさんの方に助けられ、「ひとりぼっちじゃない」ということを感じさせてくれました。

 

著書『竜ちゃんのばかやろう』の巻末に、私の本名を頭文字にした「あいうえお作文」を載せました。

 

うえをむいて
えがおでいたら
しあわせが
まっているかな
ひとりじゃない
かんがえすぎない
るんるるん♪

 

今後もこんな感じで前向きに生きていこうと思っています。

 

── 今後どのような活動を予定されていますか?

 

広川さん:私でお役に立てるのであれば、講演活動も継続していきたいと思っています。皆さんが竜ちゃんのことを愛してくださったからこそ、私たちは生きてこられました。これからは竜ちゃんを愛してくださった方々への恩返しをしていきたいと思っています。また、これまでの主婦経験を活かして料理系のYouTubeを始める予定です。お楽しみに!

 

PROFILE 広川ひかるさん

ひろかわ・ひかる。本名、上島光。お笑いタレント。1970年、埼玉県で生まれる。高校時代から芸能界を目指し、1988年、『発表!日本ものまね大賞』で優勝し芸能界デビュー。1994年に上島竜兵と結婚。結婚後は一時専業主婦として家庭に専念するが、まもなく復帰し情報番組のリポーターなどで活動。現在は個人事務所に所属。ブログとInstagramで日々の生活や仕事について発信中。著書に『竜ちゃんのばかやろう』(KADOKAWA)がある。

取材・文/佐藤有香 写真提供/広川ひかる