6年の結婚生活の終わりがくるとき

初の出版記念会にて

 

── 結婚後のブンさんはいかがでしたか?

 

山本さん:子育てを思いきり楽しんでいました。学校行事にも積極的に参加して、役員をかってでたり、保護者の集まりにもできる限り出席し、みんなとすっかり打ち解けて一緒に飲みに行ったり、どんどん交流を広げていました。学園祭では、お好み焼きや焼きそば屋をやって、みんなに率先して声をかけていました。

 

小学校の授業参観では、見ているだけでは飽きたらず、授業に参加したことも(笑)。英語の授業で「体を使って動きましょう」という内容だったのですが、ブンさんが生徒と一緒になって体を動かすものだから、後ろで見ていた保護者は、みんな大笑いしていました。

 

── 授業参観をそんなに満喫されていたのですね(笑)。でも、思春期のお子さんたちから、「お父さんやめてよ~」とクレームが入ったりしませんでした?

 

山本さん:2人ともお父さんが大好きで、穏やかな性格だったこともあって、一緒になって笑ってました。とにかく楽しそうな姿を今でもよく覚えています。彼は、「子どもたちが生きるエネルギーを与えてくれた」と言ってくれました。

 

── 2014年に79歳でブンさんが亡くなった時には、「引退式」という名のお別れ会で見送られたのが印象的でした。

 

山本さん:“生涯現役でいたい”とずっと言っていたので、「最後まで現役で仕事を続けられたら私が引退式をしてあげる」と伝えていたんです。お別れの会では、たくさんの方が彼を見送ってくださって、本当に皆さんに愛されていた人なんだなと実感しました。

 

彼はいつも「もうひと花咲かせるから」が口癖でした。亡くなる数分前まで、その言葉を言い続けて、旅立っていきました。あらためて、「なんてすごい人なんだろう」と尊敬しましたね。

 

彼との実質的な結婚生活は6年という短い期間だったけれど、365日、仕事もプライベートも24時間一緒。普通の夫婦の何倍も一緒にいられたので、感覚では30年分。私にとって本当に幸せな時間でした。彼が私に遺してくれた最大の宝物は、「人とのつながり」だと思っています。いろんな集まりに私を連れて行き、仲間にどんどん紹介してくれました。きっと、自分がいなくなったあとも、私を孤独にしないための彼の心遣いだったのでしょう。その時に築いたつながりが、今も私を支えてくれています。

 

PROFILE 山本由美子さん

やまもと・ゆみこ。東京都出身。山本文郎さんと結婚後、テレビ業界にて旅番組やバラエティなど各方面で活躍。ブライダルデザイナー桂由美さんのサポートや飲食業と幅広く活動中。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/山本文郎事務所