この7月にスケバン刑事三姉妹による5年ぶりのコンサートを控えている浅香唯さん。そんな浅香さんはドラマ、舞台などの役者業や音楽活動に加えて、プロ雀士の肩書きも。なんと麻雀は30年以上のキャリアだとか!(全5回中の5回)
スケバン刑事三姉妹のステージは「喜び3倍で苦しみは3分の1」
── 7月(今月)には、『スケバン刑事Ⅲ 少女忍法帖伝奇』(1986~87年)で、風間三姉妹として共演した大西結花さんと中村由真さんとの「三姉妹コンサート」を開催されるそうですね。3人でのコンサートは5年ぶりだとか。
浅香さん:2015年と19年に三姉妹でのコンサートを開催した以来なので、楽しみですね。2人と息を合わせながら歌ったり、フォローし合いながらステージを作り上げていくのは、ソロでのライブとはまた違った面白さがあります。喜びが3倍、苦しみは3分の1に分散される感じがしますね。
── 心強いですね。緊張も3分の1に?
浅香さん:いえ、これが不思議なもので、誰かが緊張したり、感激して泣いてしまったりすると、ほかの2人にたちまち伝染してしまうんです。だから、3人でステージに立つときには、「緊張しない」「泣かない」が合言葉。そうでないと、お互いに迷惑をかけてしまいますから。
とはいえ、そうした感情はなかなか自分でコントロールできるものではないので、ほかの2人に悟られないようにすることが大事。“不安な顔で助けを求めるように、お互いを見ないようにしよう”というのが、暗黙の了解になっています。ただ、3人ともステージの前はものすごく緊張してしまうんです(笑)。それ自体はしかたないことだと思っているんですが、せめて人にうつさない努力はしようと。
── 浅香さんと同世代ですが、涙もろくなってくる年代ですよね。しかも、いったん涙が出るとなかなか止まらない(笑)。
浅香さん:そうなんですよね。なかでも、私が一番涙もろいので、いつも2人に注意されます(笑)。私さえしっかりしていれば大丈夫だったのに…という場面がよくあるんです。本当にちょっとしたことで嬉しくなったり、感動してすぐに泣いたり。もう最近では、あきらめています。
世のため人のため「もうセーラー服は着ませんよ」
── でも、ステージで流す感動の涙なら、素敵じゃないですか。
浅香さん:そうなのですが、涙を流すというより、号泣なんです。そうなると、ほかのメンバーも泣き出して、みんな歌えなくなるので(笑)。
── 感激屋でいらっしゃるのですね。ところで、風間三姉妹といえば、セーラー服姿のイメージが強いのですが、期待に応えて披露されるご予定は?
浅香さん:着ませんよ(笑)。2015年に、数十年ぶりに3人でライブをしたときは、セーラー服のリクエストが多かったので、当時の衣装に近い服を着てみたんですけれど、「世のため人のために、セーラー服を着るのだけはやめたほうがいいね…」という結論に達しました(笑)。
── ドラマが終わっても、プライベートでずっと交流を続けていらしたと聞きました。
浅香さん:ドラマの厳しいスケジュールを笑顔で乗り越えられたのも、2人がいたからですね。プライベートでも本当の三姉妹のようにすごく仲良くなって、おつき合いが続いています。なかでも由真とは、偶然にも家が目の前だったので、彼女が30代でアメリカに渡るまで、毎日のように一緒にいました。時間が空けばすぐに電話をして、「何してるの?ひまだから出前でも取ろっか?」とご飯を食べたり、毎晩一緒にウォーキングをしたり。懐かしい思い出ですね。
父親との共通の趣味を持とうと始めた麻雀でプロになるとは
── 2022年には、日本プロ麻雀協会のプロテストに合格し、プロ雀士としても活動されています。そもそも麻雀を始めたきっかけは、何だったのでしょうか?
浅香さん:23歳のころ、父と共通の趣味を持つために始めたのがきっかけでした。10代後半くらいから、母が相手だと会話が弾むのに、父とは話題がなくて。共通の趣味があれば話が弾むかなと思ってゴルフを始めたのですが、あまりにセンスがなくて断念しました(笑)。“ほかに何かないかな”と探していたところ、子どものころ、父が友人と楽しそうに麻雀をする姿を思い出したんです。麻雀を覚えれば、お正月の集まりでも家族麻雀ができるので、楽しい時間が過ごせるんじゃないかなと。
── 親孝行ですね。そこから、プロを目指そうと思われたのは、なぜだったのでしょう?
浅香さん:もともと何事も100%で取り組まないと気が済まない性格なので、どうせやるなら、真剣に向き合ってみたいという思いはずっと持っていました。ただ、プロ雀士になるにはなかなかハードルが高く、あきらめかけていたんです。でも、人生の折り返し地点を過ぎたころから、「後悔しないように、やりたいことは全部やっていこう!」と思うようになりました。心が動くことにどんどん挑戦したい。プロ雀士への道も、そのひとつでした。麻雀というゲームのおもしろさ、“奥深さ”をもっといろんな人に知ってもらいたい。その架け橋になれたらいいなという思いがあります。
「麻雀は人生に似ている」タイミングの大事さを知って
── 麻雀の奥深さというのは…?
浅香さん:麻雀は、自分との戦いでもあります。たとえば、いい手を持っているのに、どうにもツキがなくて、思うようなゲームがまったくできないときというのもあるんですね。本当は攻めていきたいんだけど、そこをあえてグッとこらえて、自分自身の感情をコントロールして、タイミングを待つ。精神力が鍛えられるんです。
── 押しと引きのタイミングを見誤らないことが大事なんですね。
浅香さん:攻めるとき、守るとき、我慢するとき。それらを見極め、最適なタイミングで行動にうつす。人生と似ているなあと思います。麻雀に出会ってから、“なんでもイケイケの精神で進んじゃダメなんだな”と学びましたね。
PROFILE 浅香 唯さん
あさか・ゆい。1969年生まれ、宮崎県出身。1984年、ザ・スカウトオーディション「浅香唯賞」を受賞。翌年、シングル『夏少女』で歌手デビュー。86年、フジテレビ系連続TVドラマ『スケバン刑事Ⅲ 少女忍法帖伝奇』で主役の三代目麻宮サキを演じ、ブレイク『Believe Again』『C-Girl』『セシル』など多数のヒット曲を持つ。2002年に結婚、2007年に長女を出産。
取材・文/西尾英子 画像提供/ジャム企画