3年、4年とオーディションに落ち続ける生活を送っていた小野真弓さん。周囲は美人やスタイルのいい人ばかりで、何をアピールすればいいか悩んでいたといいます。そんななか、いきなり話題となるCMに抜擢された理由は、小野さんの「ふつうっぽさ」でした。(全4回中の4回)
「ミュージカルに出たい」が芸能界を目指すきっかけ
── 小野さんが芸能界に入ったきっかけを教えてください。
小野さん:小さいころから「いつかミュージカルや舞台に出演してみたい」と思っていました。でも、募集要項を見ると、だいたい「ダンス経験が1年以上」とあったんです。家の近所にはダンス教室などがなくて…。どこで習ったらいいの?という環境でした。
高校3年生のとき、たまたま読んでいたファッション雑誌に、現在の所属事務所であるサンミュージックの「新人タレントオーディション開催」という広告を見つけたんです。「オーディションに受かると1年間レッスン無料」とありました。芸能界に入りたい気持ちもありましたが、何よりも「これはダンスを習うチャンスだ!」と思い、受けてみたのが最初のきっかけです。
── その新人タレントオーディションを受けて合格したのが、デビューのきっかけだったんですね。
小野さん:じつはオーディションには落ちてしまったんです。でも、そのときに受付をしていたあるマネージャーさんが、私を見て「この子は絶対受かるだろう」と思ってくれたようです。ところが合格者リストには私の名前がありませんでした。その方が「気になるからもう一度呼びたい」と、上の人にかけ合ってくれて。後日、改めて声をかけていただきました。
オーディションは不合格続き…悩んだ揚げ句に
── 芸能事務所に所属した当初は、どんな生活を送っていたのでしょうか?
小野さん:私を見出してくれたマネージャーさんは、すごく熱心に売りこんでくれたんです。学校帰りの私を連れて「うちの新人です」と、出版社やテレビ局などに挨拶回りをしてくれました。「こうやって顔を見せてアピールするのも仕事のひとつだから」と、いろんな会社に連れていってくれました。
── 本当に熱心なマネージャーさんだったんですね。
小野さん:そうなんです。ところが、なかなか芽が出なくて…。アルバイトをしながらオーディションを受ける生活を3、4年続けました。オーディションに落ちると、全否定されたみたいな気持ちになるんです。周囲はすごくきれいでスタイルもいい人ばかり。それに比べて私は本当に普通で、何をアピールしたらいいのかわからず途方に暮れていました。ときには「芸能の仕事は向いていないのかな。方向転換して違う仕事も考えないといけないのかもしれない」と思うこともありました。
── それは苦しい状況だと思います。
小野さん:あるキャンペーンガールの仕事をしているときに、スタッフの方とお話をする機会があったんです。それで「どうしたらオーディションに受かるかわからなくて」と、相談しました。そうしたら「オーディションは、人の優劣を決めるものではない。求められている役に合うかどうかだよ。たとえば、明るくて元気な人を探しているときに、クールで近寄りがたい雰囲気の人が応募してきても落ちるよね?オーディションに落ちても、『自分はイメージしているキャラクターではなかったんだな』と割りきるといい」と言われたんです。すごく納得して、ちょっと気が楽になりました。
その後、「アコム」のCMのオーディションに合格したとき、私のふつうっぽい雰囲気が評価されたと聞きました。コンプレックスだった部分が評価されたのは意外だったし、嬉しかったです。
測ったらEカップ「私、グラビアもできます!」
──「アコム」のCMでブレイク後は、グラビアアイドルとしても活躍されていました。
小野さん:もともとはグラビアの仕事ができると思っていませんでした。というのも、正確にサイズを測ったことがなくて、自分は胸が小さいと思いこんでいたんです。アコムのCMが決まる前、オーディションに落ち続けていたときに、たまたま下着屋さんで、胸のサイズを測ってもらったことがありました。そうしたら、「Eカップありますよ」と、教えてもらったんです。
「えっ、そんなにあるんだ!胸が大きかったらグラビアもできるし、仕事の幅も広がるかもしれない」と思いました。当時は少しでもアピールできるものが欲しかったんです。だから、強みができた!と嬉しかったです。
── たしかにきちんと測らないと、正確な胸のサイズはわからないですね。
小野さん:お店から出て速攻で「私、胸がEカップあるらしいんです。グラビアのお仕事もできるかもしれません!」と、マネージャーさんに電話しました。私の勢いがすごかったからか、マネージャーさんには「まあまあ、落ち着いて」となだめられました(笑)。「いますぐグラビアアイドルとして売り出そうとは思っていないけれど、もしそういう話があったら考えておくよ」と、言われました。
── グラビアアイドルとして写真集を何冊も出されていますね。グラビアの仕事に抵抗はなかったのでしょうか?
小野さん:自分から「胸があります!」とアピールするくらいだから、抵抗はそんなになかったです。1年に1冊のペースで写真集を出して、多いときは年に3冊くらい出したこともあります。写真集では水着だけでなくて、遊びのあるカットを入れることもあります。たとえば、シーツにくるまってみたり、花やくだものなどで胸を隠してみたりするものです。あるとき、海外の撮影で「動物が好き」と言ったら、現地のコーディネーターさんがすごく可愛い、小さい猿を連れてきてくれたんです。抱っこしたシーンを撮影しようとしたら、意外と凶暴で。胸をかじられそうになり、これはムリとなりました。
── 猿にかじられそうになるとは!さまざまなご経験をされていますね。
小野さん:高校3年生のとき、芸能事務所のオーディションに落ちてそのままだったら、別の人生もあったかもしれません。でも、すごく熱心に推してくれるマネージャーさんと出会えたことが大きな転機になりました。その方の熱意に応えたくて、自分の強みを必死に探したおかげで、いろんなお仕事を経験させてもらえたと思っています。
PROFILE 小野真弓さん
おの・まゆみ。1981年生まれ、千葉県出身。「アコム」のCMで人気に火がつき、グラビアアイドル、俳優として活動。2019年、東京から千葉県木更津市へ移住。 地域猫活動や預かりボランティアを行い、俳優の坂上忍氏が所有する動物保護ハウス「さかがみ家」のスタッフとしても活動中。
取材・文/齋田多恵 写真提供/小野真弓