パーツモデルとしてデビューし、5年間で100本のCMに出演していた金子エミさん。長男の海人(かいと)さんを出産して、生活が一変したそうです。(全5回中の2回)
出産後すぐに受けた長男の緊急手術
── ご長男を出産されたときのお話を聞かせてください。
金子さん:26歳で結婚をして、27歳のときに長男の海人を出産しました。産まれてすぐに赤ちゃんの顔を見て、「この子はダウン症だ」と思いました。小学校のとき同じクラスにいたダウン症の子によく似ていたんです。
そのとき頭に浮かんだのは、「私の人生、終わったな」ということでした。「障がい者の親になるのだから、自分の好きなことはもうできないんだ」と思ってしまったんです。今振り返ると、人生は全然終わってなくて、それが私の人生の始まりだったんですが…。当時は、SNSなんてなかった時代です。ダウン症の子育てを発信している人もいなかったし、情報もほとんどありませんでした。
パーツモデルの仕事も、もう続けられないだろうと思いました。でも、事務所に入ったときからお世話になっていたマネージャーさんにそのことを話したら、「あなたね、ダウン症は普通のことよ」と言われたんです。「やめることはいつでもできるんだから、また仕事ができる状況になったらいつでも連絡していらっしゃい」と言ってくださいました。
結局、7か月ほど休業して、また仕事を再開することができました。私は人生のターニングポイントで人に恵まれてきたのですが、そのマネージャーさんには、ほんとうに救っていただきました。
── 初めての子育てはいかがでしたか。
金子さん:産まれてすぐ、海人は肛門を作る手術を受けたんです。赤ちゃんは産まれて24時間以内に「胎便」といううんちが出るはずなのに、海人は肛門が塞がっていて、便が出てこられないことがわかって。「これは大変だ」とすぐに大きい病院に運ばれて、手術を受けることになりました。そのとき、たまたま執刀してくださったのが、ベトちゃんとドクちゃんの分離手術をされた先生だったんです。研究熱心ですばらしい名医でした。
先生のおかげできれいに肛門ができて、腸とつながったのですが、人の体は放っておくと傷を塞いでしまうんですよね。塞がらないように、毎日肛門から金属製の棒を通してあげるようにと言われました。「赤ちゃんが小さいうちは棒ではなくて、お母さんの指を入れてあげるのが一番いいんだよ」と説明してくださっていた先生が、私の手を取って、「どうしてこんなに爪が伸びているの!」とおっしゃったんです。そして、「ちょっとハサミ持ってきて!」と看護師さんに指示をされて。「パーツモデルをしています」と説明する間もなく、その場でパパッと爪を切られてしまいました。
それまでの私は、きれいに爪を伸ばして、いつも手袋をつけて手をいたわっていました。こんなに爪を短くしてしまったら、もうパーツモデルとしては仕事ができなくなってしまうかもしれません。でも、その切り口がとてもきれいだったのを見て、「ああ、この先生に切っていただいたんだから、この子は大丈夫」と安心したんですよね。