気になる再婚への迷いは

熊谷真実
60歳を過ぎて初めてバンド活動も。熱狂!

──「3回目の結婚なので公表をためらった」とおっしゃっていました。再婚することに迷いはあったのでしょうか?

 

熊谷さん:私は、“お互い好きでおつき合いしているなら、当然結婚するでしょ”という発想なんです。むしろ結婚しない選択はない。相手に対しても、「あなたもそうよね?」と思ってしまう。ですから、私のなかでは、再婚はごく自然な流れでした。恋愛=結婚だなんて、なんか恥ずかしいんですけどね。

 

── いえ、まっすぐで素直な方でいらっしゃるんだなと。ただ、年齢を重ねると、余計なことを考えすぎて、なかなか結婚に至らないケースも少なくありません。

 

熊谷さん:その感覚も理解できます。ただ、私たちの年代で結婚を考えたときに、一番大事なのは、自分で生活していける基盤があるかどうかが大きいと思うんです。60代以降になると、「離婚したいけれど、いま別れると年金がもらえない」という声も聞きますし、とどのつまりはお金という面も否めません。

 

私がたまたま3度目の結婚ができたのは、これまで培ってきた仕事で、ある程度の経済的な基盤ができていたというのもあるのかなと。こう言うと、“芸能界という特殊な世界だから恵まれている”と思われるかもしれませんが、決して先が保証されている仕事ではないですし、実際コロナのときはお仕事がなくなり、大変な思いも経験しました。だからこそ、これからのことを考えて、いろんなチャレンジをしてきたつもりです。

 

経済的な基盤があれば、金銭面で依存しあうことがないから、愛という部分の純度が高くなって、そこには楽しみしか生まれない気がするんですよね。お互い自立したうえで、寄り添うことができたら、相手にはプライスレスなものしか求めないんじゃないかしら。

 

PROFILE 熊谷真実さん

1960年生まれ。東京都出身。俳優。NHK朝の連続小説『マー姉ちゃん』(79年)、NHK大河ドラマ『功名が辻』(06年)、映画『死刑台のエレベーター』(10年)、映画『アンダードッグ』ほか出演。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/熊谷真実