「食生活を変えて健康になる」。誰もがわかっていることです。そして、なかなかできないことでもあります。杉田かおるさんは暴飲暴食をあらため、野菜を中心とした食生活に変えたところ、「心」にも変化が訪れたと言います。(全5回中の5回)

SNSをしない夫「あっけにとられたり、優しさを感じたり」

── 杉田さんは2005年に最初の結婚をされていますね。

 

杉田さん:1度目の結婚のときは、周囲から「あの人と結婚したら?」と勧められ、まわりに流されるがままだったところがあります。結局2か月ほどで離婚したし、ケンカをすることもないくらい一緒にいた時間は短かったです。

 

野菜中心の生活ですっきりとした杉田かおるさん (C)高丸慎一

── その後、2013年に再婚をされたそうですが、ご主人はどんな方でしょうか?

 

杉田さん:いまの夫は6歳年下で、ひと言で表すと「天才」です。ものすごく頭がよくて博士号も持っているんですが、びっくりするくらい欠けている部分があるんです。私も似たようなタイプだけど、それぞれ欠けている部分が違うから補い合えている気がします。私も夫も、お互いをすごくおもしろい存在だと感じているのかもしれません。

 

夫は目に見えるものや自分の興味あるものしか見ていない感じで、ちょっと浮世離れしているんです。たとえば、「今日のかおるちゃんのスケジュールは?」と聞かれるから「東京の事務所で取材を受けるのよ」とその日の予定を答えるじゃないですか。そうしたら、「え?事務所ってなんのこと?」って、不思議そうに聞き返すんです。

 

私、いまの芸能事務所に、4年前くらいからお世話になっているんですよ。それなのに私が事務所に所属していることに気づいていなかったらしいです。むしろ、4年で知ってくれたのは、すごいことかもしれません!そのわりに、私がネットニュースなどに掲載されると、まっさきに見つけるのは彼なんです。

 

── いまのお話だけで、ご主人の独特の感性が伝わります。

 

杉田さん: SNSのこともよく知らなかったみたいです。私がインスタなどに写真をアップしているときも、「ずっとスマホを持って熱心に何かをしてる。もしかして、かおるちゃんは浮気をしている?」と疑っていたみたいです。

 

しかも、すべてのことに嘘がないというか、思ったことをズバッと伝えてくるんですよ。オブラートに包まず、核心をついてくるからグサッときます。「結婚生活って修行だな…」と思うくらいです(笑)。おかげで、ネットで何を言われても気にならなくなりました。

 

── ご主人についていろいろ言われていますが、幸せそうな様子が伝わってきますね。

 

杉田さん: そうですね、幸せっていろいろな形があると思います。ひと昔前だと、結婚とは「人生が大きく変わる大イベント。結婚式も含め、とても華やかで非日常的なショー」といったイメージが少なからずあった気がします。

 

でも、夫と一緒になって「結婚ってごく当たり前の日常生活のなかに、地続きであるものだ」と知りました。一緒にニュースを見ていても、同じところで「これはよくないね」と思えるし、ちょっとしたことで共感し合えるパートナーがいるのは心地いいです。一方で、自分とは全然違う部分もあるから、おもしろくて飽きないですね。

 

母の介護のときも夫がいてくれて助かりました。介護が始まったとき、私はすでに結婚していました。いまの時代は、義理の親と一緒に暮らすことに抵抗がある人も少なくないかもしれません。

 

でも、夫は母との生活をごく当たり前に受け入れてくれたんです。もし、私と母のふたりだけだったら、関係が深いぶん、ケンカも増えていた気がします。だから、夫が緩衝材になってくれて本当にありがたかったです。

暴飲暴食から野菜中心へ「おかげで風邪をひかない体に」

── 毒舌キャラだった杉田さんですが、野菜づくりに積極的に取り組んでいたとも伺いました。

 

杉田さん:話は結婚する前にさかのぼるのですが、野菜に興味を持ったのは2008年ころです。当時は暴飲暴食で、太ったりやせたりを繰り返していたんです。テレビ番組のダイエット企画にも参加しても、すぐにリバウンドしてしまって…。

 

そんなとき、妹がオーガニックダイエットの本を紹介してくれました。その本は食の安全について書かれていたんです。「安全なものを食べて、バランスのいい食事をしていたら、リバウンドしないかもしれない」と思いました。

 

そこで食材を選ぶようにしていたら、だんだんオーガニック野菜のおいしさに目覚めたんです。シンプルに塩とオリーブオイルだけで味つけをしたり、鍋にしたりするだけで、素材の本来の味を楽しめるようになりました。

 

オーガニック野菜にめざめて農業にも挑戦

── 野菜を積極的に食べることで、心身に変化はありましたか?

 

杉田さん:ものすごくありました。 それまでは風邪をひきやすかったのが、そんなに寝込まずに済んだり、ケガをしても治りが早かったり、体質が変わったように思いました。

 

性格にも変化がありました。以前は仕事も忙しくて、イライラしやすかったんです。それが、自分でもおだやかになったと思います。自分の心の声に耳を傾ける余裕ができたのかもしれません。野菜って本当にすごいと思ったから、どのように作られているのか興味を持ち、オーガニックの野菜塾に通い、実際に野菜を作るようになりました。

 

── 実際に野菜を作ってみていかがでしたか?

 

杉田さん:ものすごく丁寧に作っているんだと感じました。お米ができ上がるまで1年かかるじゃないですか。土壌から丁寧に作って、手間暇かけていることに感動しました。

 

自分が1年かけて野菜を作ると、愛おしくてたまらないんですよ。きゅうりなどはいいタイミングで収穫しないと次が育たないのに、大きくなっていく姿を見ていると「頑張っているね」と成長を見守る親のような気分になり、なかなか収穫できなくて。

 

尊くて仏壇にあげるほどでした。私たちは、大地からの恵みをいただいているんだなと考えると、精神衛生上もすごくよかったです。

 

それに農家の方が野菜づくりと誠実に向き合う姿勢が、撮影スタッフの人たちが真剣にドラマ制作する姿と被ったんです。「ものをつくる姿ってかっこいいな。最近の私は仕事に追われていたけれど、もっと一つひとつの作品に向き合っていきたい」と、本来の人間性を取り戻せた気がします。それが私にとって野菜づくりで得た一番の収穫でした。

 

PROFILE 杉田かおるさん

すぎた・かおる。1964年東京生まれ。俳優、タレント。7歳で「パパと呼ばないで」に出演し子役としてデビュー。79年TBSドラマ「3年B組金八先生」に妊娠する中学生を演じ話題に。バラエティ番組にも多く出演。2009年に10キロのダイエットに成功。美容、健康やオーガニック、農業などにも関心を深める。2013年から母の介護に取り組む。2018年、俳優としての活動を再開。

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/杉田かおる