「起業してバリバリ働く感じではないんです」。モデルやタレントとして活躍してきた神戸蘭子さんが、コロナ禍で始めたのがフォトスタジオのプロデュースでした。手探りながらも、充実した日々を聞きました。(全4回中の4回)
モデルの経験を活かせるビジネスに参加
── 神戸さんはモデルとして活動するかたわら、起業もされたそうですね。
神戸さん:ベビー服ブランド「Baskin Folks」を立ち上げと同時期、「フォトスタジオ」もオープンしました。現在はベビー服ブランドのディレクター、フォトスタジオのプロデュースも頑張ってます。
コロナ禍に入ってから、アパレルで働いていたときの知り合いにベビー服ブランドの立ち上げに誘われました。
ベビー服は子育てをしてきた経験から、一番最初に触れる新生児の肌着は柔らかい優しいものにしたい思いがあったので、自分で探し回り、これだ!という肌に優しく包み込むような生地を見つけました。いまでは新生児だけではなく、キッズ用や私も肌が弱いので大人の肌着も作ってます。
さらに、これから出産を迎える方のために、「ベビーボックス」という、ベビーに必要なアイテムを揃えたセットも展開したり、ベビーやキッズ服やスタイ、エプロンなども完成しています。出産祝いとしても利用できるよう、ギフトボックスにもかなり気合いを入れました。
フォトスタジオは出産後、子どもの成長や記念日を写真に残す機会が多くて。いつか自分でもお客様に喜んでもらえる写真が撮れる場所が作れたらいいなと思っていて、2023年、東京・四谷に「Studio Capture Free」というフォトスタジオをプロデューサーとしてオープンしました。
スタジオの内装や写真を撮る際のアイテムなどはすごくこだわって、小物も自分で買い出しに行きました。和装の衣装は小さなお子様でも着脱しやすい、スタジオの雰囲気に合うようにデザインしました。
スタジオもオープンして約1年になります。お客様と直接会う機会はないですが、すべてのお客様の写真をチェックしています。昨年、ベビーブランドとフォトスタジオの展示会も開催できました。
── もともとモデルとして撮影される側だった神戸さんが、撮影をプロデュースすることになったのですね。これまでの経験を活かせている部分はどんなところですか?
神戸さん:「この写真いいね」と思う感覚って、人によって異なるんです。だから、何枚もある中から1枚だけ写真を選ぶ場合、みんな違うものを選びがちです。感覚やセンスの違いがすごく出る部分かもしれません。
このフォトスタジオは私がプロデュースさせてもらっているので、カメラマンさんに「こんなふうに撮ってほしい」と伝えています。基本的にはお店のテイストに合った写真を撮影していますが、お客様のご要望に合わせて、なんでも撮影できます。
いままでは私がモデルの立場だったから、撮影中、どんな気配りをしたらお客様がリラックスして自然な表情を浮かべやすいかがわかるんです。これまでの経験でつちかった感覚を、フォトスタジオでも活かしていると思います。
愛情あふれる写真が撮れると自分ごとのように嬉しい
── フォトスタジオは子どもの撮影専門なのでしょうか?
神戸さん:お子さんの撮影のお客様が多いですが、大人の方も撮影しています。家族写真やマタニティフォト、卒業式などの記念の写真も多いです。
ウエディングフォトや、オーディションなどの宣材写真も撮影します。ありがたいことに好評で、リピーターの方もたくさんいらっしゃいます。撮影で難しくもやりがいがあるのは、「小さいお子さんや赤ちゃん」の写真だと感じます。
── 子どもや赤ちゃんの撮影は、たとえばどんなところが難しいと思いますか?
神戸さん:大人だと、「ちょっと顔を上げてください」とか「笑ってください」といったカメラマンの指示に従ってくれてくれます。
でも、小さい子はじっとできないし、こちらの指示通りにカメラのほうを向いてくれるわけでもありません。だから、大人の撮影をする感覚で「いい写真」を撮ろうとするのは難しいんです。
私は子どもが動き回ったり豊かな表情を見せてくれる瞬間を撮りたいと思っていて。子どもは成長が早いから、そのときの写真って「いま」しか撮れないじゃないですか。笑っていたら当然、可愛いし、ちょっと横を向いたり泣いたりしているのも、その時期ならではだと思うんです。
撮影のときにはスタジオのスタッフが全力で、お子さんのいい表情を引き出すお手伝いをしています。パパママが子どもに愛情を注いでいる雰囲気が伝わる写真が撮れると、「フォトスタジオを始めてよかった」と感じます。
お昼ご飯も食べられない忙しさに気づいて
── 現在、ふたりのお子さんを子育て中の神戸さんですが、フォトスタジオを立ち上げてから、子育てと仕事はどのように両立していますか?
神戸さん:子どもが習いごとをしている間に打合せをするなど、時間に融通がきくため、ムリなく子育てと仕事を両立できていると思います。一緒に仕事をしてくれる仲間も気づかってくれるので、本当にありがたいです。
ただ、子育てや別の仕事との両立でなかなか仕事が進まないこともあります。一時は、夜中まで仕事をしたり、お昼ご飯を食べるヒマもない日が続いたりしたので、体力も落ちてきているなか、いまは意識的にオンオフを切り替えるようにしています。
── べビーブランドとスタジオをオープンしてみて、実際いかがですか?
神戸さん: 子育てと両立して大変なことも多いですが、スタッフみんなと楽しくやらせていただいていて。学生のころに学んだことや、アパレル会社やモデルの仕事経験を活かせる機会があることに感謝しています。毎日すごく忙しいのですが、とても充実しています。
PROFILE 神戸蘭子さん
かんべ・らんこ。1982年生まれ、モデル、タレント。女性ファッション誌『JJ』のSサイズモデルとして雑誌やテレビ番組などで活躍。2014年結婚、現在2児の母親。デニムリメイクのハンドメイドブランド「CIEL BONBON」を設立。2023年ディレクターを務めるベビー服ブランド「Baskin Folks」、フォトスタジオ「Studio Capture Free」をプロデュースし、2023年にオープン。
取材・文/齋田多恵 写真提供/神戸蘭子