「自分だけが幸せならそれでいい」。そう思う人生から、「自分だけ幸せなんて、つまらない」と、考えるようになった出会いが浜田ブリトニーさんにはありました。なぜそう思ったのか、それで何が変わったのか。人生の変えた師匠との出会いについて聞きました。(全5回中の4回)
大ファンだった先生にパーティーで遭遇
── 現在の浜田さんは、恩師だという漫画家・御茶漬海苔さんのサポートもされているそうですね。御茶漬海苔さんとの出会いを教えてください。
浜田さん:子どものころから御茶先生(御茶漬海苔さんのこと)の大ファンで、漫画が出るたびに愛読していました。大人になり私も漫画家になって、出版社のパーティーがあったとき、御茶先生も来ると聞いたんです。それで編集の方に「紹介してください!」とお願いしたのが先生と出会ったきっかけです。
そこからだんだん仲よくなっていきました。10年くらい前に私が西新宿に「オカオカハウス」というダイニングレンタルスペースレストランをオープンしてからは、たびたびお店に遊びに来てくれるように。
先生は「オカオカハウス」にすごい愛着を持ってくれて、ずっと遊びに来てくれていました。先生が体を悪くして、糖尿病で目が悪くなっても、脳梗塞にかかって倒れたあとも、何度も来てくれたんです。いつも自分のことよりも、私を気にかけてくれています。
「両目が不自由に」生活も生きがいもサポート
── 御茶漬海苔さんが病気になられたときも最初からサポートしていたのでしょうか?
浜田さん:そうなんです。もともと御茶先生は、川崎の一軒家でひとり暮らしをしていたんですが、病気が悪化してしまって…。
片目が見えなくなり、ひとりで生活するのは大変な状況に。老後資金も必要なので、家を売却することになったんです。でも、新たに家を借りるのも大変な状況でした。そこで、「保証人になるから、私の自宅の近くに引っ越してきませんか?」と誘いました。
近所だと様子を見やすくなるから、毎日、先生のおうちに行き、掃除をしたり、食事を用意したりするなど、身の回りのお世話をしています。
最初は見えていたもう一方の目もだんだん見えなくなってくるから、病院も付き添って一緒に行っていました。私が行けないときは、お店のスタッフが代わりに様子を見に行ってくれています。
── そこまでサポートできるのはなかなかできないことだと思います。
浜田さん:そこは私と御茶先生の間に、長年の友情と信頼関係があるからだと思います。御茶先生はもう家族みたいな存在。
それに先生と私はビジネスパートナーみたいな一面があるかもしれません。じつは、私が経営しているカフェバー「オカオカハウス」は、経営が危なくなったときがあるんです。そのとき、御茶先生は自分の体だけでも大変なのに、私を心配して資金を提供してくれたことがありました。
先生はいつも、自身のことは二の次で、周囲のことを気にかけてくれるんです。資金提供についても、自分の生活費なども必要なのに、私のことを最優先してくれて…。本当にありがたかったし、嬉しかったです。
御茶先生のいまの状況だと漫画の仕事はできません。でも、先生の才能を活かせないのは本当にもったいない。だから、生活のフォローだけでなく、漫画家としての御茶先生をもっとたくさんの人に知ってもらう活動もしています。
たとえば、カフェバーのイベントとして、月に1度、漫画家が漫画を教える「まんたま塾」というイベントを開いていたのですが、御茶先生にも講師として参加してもらいました。お店で個展を開いてもらったこともあります。
それによって、御茶先生に講師料などの収入が入ります。私としてもお客様として御茶先生のファンがお店に集まってくれるから、ありがたいです。私と先生、双方にメリットがあるんです。
「自分だけ幸せでもつまらない」と教わった存在
── 個人としての御茶漬海苔さんと、漫画家としての御茶漬海苔さんの両方を支えているんですね。
浜田さん:そうですね。でも、根底にあるのはやっぱり御茶先生への尊敬心です。漫画家としても素晴らしい才能があるし、人間的にも、本当に愛情深くて純粋な方です。ふつうの人とは違う次元で生きているのかも…と思うくらい。
だって、御茶先生は自分をだまそうと近づいてきた人とも、すごく仲よくなっちゃう。以前、御茶先生の作品の著作権を別の人が持っていたことがあったんです。
先生は自分の作品を自分のものだと言えない状況になっていたのに、その原因を作った人と一緒にイベントに行くくらい親しくなっていて。人には誰でもいい面と悪い面があると思うのだけど、先生には人のいい部分しか見えてないみたいです。
「先生、もうちょっと警戒心持ったほうがいいよ!」と言いたくなるくらい。著作権の件については弁護士を通じて解決しました。御茶先生と一緒にいると、心の美しさや純粋さを学ばせてもらっている感じがします。
── 浜田さんが御茶漬海苔さんを本当に慕っているのが伝わります。
浜田さん:御茶先生のおかげで、考え方もすごく変わりました。以前の私は「自分と家族さえよければ他の人はどうでもいい」って、自己中心的な考え方をしていたんです。
でも、先生と出会ってからは「自分だけ幸せでも意味がないし、つまらない人生だな」と思うようになって。その結果、みんながハッピーになるにはどうしたらいいかを考えて仕事をするようになりました。
いまの私は、企業から依頼された仕事を他の漫画家の先生に仲介したり、漫画家の先生とファンの方が交流できる場を作ったりしています。いろんな人に喜んでもらえるからすごく嬉しいです。こういう仕事も、御茶先生と出会い、考え方が変わったからこそ始められたのかもしれません。
── 素晴らしい考え方ですね。
浜田さん:周囲から見たら、私が体調を崩した御茶先生をサポートしているように見えるかもしれません。でも、実際は、逆なんです。私を精神的に支えてくれているし、たくさんのことを学ばせてもらっています。
御茶先生と出会えたことは、私の人生のなかでもすごく大きな出来事でした。こうして家族みたいに過ごせるのは本当にうれしいです。ずっと元気でいてもらいたいし、御茶先生の漫画を、もっとたくさんの人に知ってもらえたらいいなと思っています。
PROFILE 浜田ブリトニーさん
はまだぶりとにー。漫画家・タレント・実業家。千葉県出身。週刊漫画雑誌『ビッグコミックスピリッツ』にて、渋谷ギャルのリアルな実態を描いた『パギャル!』を連載し、ホームレスギャル漫画家としてバラエティ番組に多数出演。2012年2月、株式会社PIECE EIGHTを設立し社長業もこなす。2児の母。
取材・文/齋田多恵 写真提供/浜田ブリトニー