元プロサッカー選手の小野伸二さんの妻で、モデルで実業家の小野千恵子さん。2008年にドイツリーグに移籍してから2023年に引退するまで、小野伸二さんは単身赴任。離れて暮らすパパと娘の関係を築くために、心がけていたこととは?

子どもの前でパパのことを悪く言わない

── 離れて暮らすパートナーと、どのように子育てを共有されていましたか。

 

小野さん:子育ての方針や子どもの進路のことで、夫婦で意見が分かれるということはなかったです。夫は「教育に関しては専門ではないから、千恵子に任せる」というスタンスなので、学校のことなどは、私が担当してきました。

 

夫は、教育について口を出しません。ただ、子どもたちが好きなことを見つけて頑張れているのは、パパの影響が大きいと思います。親自身がやりたいことだけをやって生きている姿を見せている、それ以上の説得力はないですよね。

 

子どもたちは、パパが輝いているところだけでなくて、つらいところや大変なところ も見ています。「好きなことだからこそ、これだけつらいことも頑張れるんだ」ということを肌で感じていると思います。

 

パパの背中を見て、「やりたいことをやるというのはこういうことだ」とわかっているからこそ、自分が壁にぶつかったとき、「乗り越えないといけないのかも」と思って、頑張ることができたのではないかと思います。

 

「子どもたちが頑張れているのはパパのおかげ」と小野さん
「子どもたちが頑張れているのはパパのおかげ」と小野さん

── 離れていてもパパの存在は大きかったのですね。単身赴任のお父さんと娘さんの関係を築くのは難しいという話もよく聞きますが、お母さんとして心がけていたことはありますか。

 

小野さん:これだけは本当に気をつけていたことなんですけど、子どもの前でパパを悪く言わないことですね。

 

お母さんからお父さんの悪口を聞かされていると、子どもはお父さんをバカにしたり、嫌いになったりしてしまうと思っていたので、それだけはしないようにしていました。もし夫に対して思うところがあったとしても(笑)、それは子どもの前では見せないようにして。

 

子どもたちにはパパをリスペクトしていてほしかったので、パパのいいところは子どもたちの前で褒めるようにしていました。あとは、何かを買うときは「パパが買ってくれたんだよ」と伝えたり、高額のものを買うときには電話でパパにお願いさせるようにしたり。そういうことは心がけていました。

 

「思春期の娘がお父さんを嫌う」というのは、日本ならではだと思うんです。海外に住んでいた頃、お父さんと娘はいくつになってもハグをしたりキスをしたりしていて、そういう姿を見て「うちもこんなふうになってほしいな」と思っていました。

 

娘たちが大きくなってもパパと仲がいいのは、パパの努力のおかげもあるかもしれないですね。娘たちと共通の話題を作ったり、同じ言葉を使ってみたり、パパも努力をしていると思います。

 

小野伸二選手の引退試合終了後の引退セレモニーでの一場面
小野伸二選手の引退試合終了後の引退セレモニーでの一場面

大きくなった娘たちとは、何でも話せる友達感覚で

── 成長された娘さんたちとの接し方で、心がけていることはありますか。

 

小野さん:小さい頃から、ふたりはおもちゃにしても遊びにしても、好きなものが全然違ったので、親としてのアプローチも違います。特に気をつけていたつもりはないんですけど、小さい頃から2人を比べることはしませんでした。次女の子育ては「2回目」というより、「新たな子育て」だと思うようにしていました。

 

長女は努力家で、頑張ってところを親にしっかり見て、ほめてもらいたいタイプです。次女は自由にさせてほしいというタイプですが、放っておくとラクなほうへ流されてしまうところがあります。どこかで点を打ってあげると、ちゃんと戻ってこられます。

 

娘たちが大きくなってからは、いかに友達感覚でいられるかということを心がけています。困ったときや悩んだとき、「こんな話もママにしていいんだ」と思ってくれていれば、話しやすいし、頼りやすいと思うので。

 

そのために、2人の話題にはたとえ「イタい」と思われたとしても(笑)、頑張ってぐいぐい入っていきます!

 

ポジティブな考え方を大切にしていると話す小野さん
ポジティブな考え方を大切にしていると話す小野さん

あとは、できるだけものごとをいいように考えて、子どもたちにもポジティブな声かけを心がけているつもりです。もし悪いことが起こったとしても、そのなかでいいことを探して感謝するという考え方は、私の両親の影響もあるかもしれません。いやなことを見つけて「いやだ、いやだ」と言っているより、そのほうが幸せですよね。そういうところは、子どもたちにも受け継いでほしいと思っています。

 

子どもたちが大きくなると、全員で一緒に何かをするという機会は少なくなると思うんですけど、離れて暮らしていても、20年前とは違って気軽につながれますよね。それぞれが自分のできることを頑張って、お互いを認めあって、応援しあえたらいいなと思っています。

 

── 小野伸二さんが現役を引退されて、ご夫婦での時間が増えますね。

 

小野さん:そうですね。いままでは娘がお友達と食事をしてくる日はひとりでビールとおつまみで済ませていたのですが、夫と一緒に食事をする機会が増えるのかな、と楽しみにしています。

 

PROFILE 小野千恵子さん

ファッションモデル、実業家。大学時代に『JJ』モデルとして活躍し、22歳で元プロサッカー選手の小野伸二さんと学生結婚後、オランダへ渡る。17年間の主婦生活を経て、40歳で『STORY』モデルとして復帰。犬と家族のブランド「LAUW(ラウー)」ディレクター。2人の娘さんは大学生と高校生。

取材・文/林優子 画像提供/小野千恵子