2004年にデビュー。グラビア、俳優、声優など幅広い活動を続け、今年でデビュー20周年を迎えた伊藤えみさん。先日結婚を発表するとともに、結婚のきっかけが「前がん病変」の手術だったことを公表しました。病気の発覚から治療、そして結婚について伺いました。（全3回中の1回）
定期検診で発覚した「前がん病変」
── 2021年に婦人科系の前がん病変が見つかったことを公表されましたが、そのときのことをくわしく教えてください。
伊藤さん：私が発症したのは「子宮頸部高度異形成」という、子宮頸がんの一歩手前の前がん病変でした。早期のがんへ移行する可能性があるため、早めに治療することが必要と言われました。
最初に異常が見つかったのは2020年6月の健康診断。要精密検査という結果だったので受診したところ、「子宮頸部軽度異形成」だということがわかりました。この時点では「軽度」だったため経過観察になり、定期的に検診を受けていたのですが、進行して「中度」になり、早期のがんへ移行する可能性がある「高度」になってしまいました。
── 診断を受けたときの心境はいかがでしたか。
伊藤さん：中度になった時点で、「軽度に戻る人や、軽度を経て異常なしの状態になる人がほとんど。ただまれに高度になる人がいる」と先生に言われました。性格上、常に最悪なことを考えて備えるタイプなので、その時点である程度「高度になるかもしれないな」
と思っていて、心の準備はできていました。実際、先生に「高度」と言われたときも意外と落ち着いていたように思います。
実はメディアプラットフォームの「note」で病気についてのちに公表しようと思い、経過や心の動きを記録していました。そのことも影響しているかもしれません。「俯瞰で見なきゃ」と思えて、わりと冷静でいられました。
ただ、治療のためには手術が必要なのですが、手術をすることで早産の危険性など、今後の妊娠、出産のリスクがあることを主治医から聞かされました。そのときは仕事が最優先で子どもについては考えていないつもりだったのですが、たまたま告知される前日に友達の赤ちゃんを抱っこしていたということもあり、その時のぬくもりが蘇ってきて、思いがけず泣いてしまったんです。その時はじめて「気づかないふりしてたけど、私は赤ちゃんが欲しいのかも」と思いました。
── 手術は大変でしたか？
伊藤さん：それが、手術当日は病院側で伝達ミスがあったようで、私が病室に到着したのが手術15分前でバタバタ。必要書類に急いでサインなどをして、緊張するまもなく手術が始まりました。その後、一泊で退院することができ、予後も順調。今は定期検診も1年に1回になり、経過をみている状態です。
── なぜ病気について公表しようと思われたのでしょうか？
伊藤さん：実はこの年に人間ドックを受けたのですが、ほかにも乳がん検診や脳ドックでも引っかかってしまったんです。その後、改めて検査をして、結果的にはどちらも異常はなかったのですが、当時40歳手前でしたので、「ああ、病気が出てくる年齢なんだな」としみじみと思いました。
公表にためらいはありましたが、逃げても治らないし正面から向き合おうと覚悟を決めたのがひとつ。それからもうひとつ、同じような境遇で不安の中にいる人たちに、私の経験が少しでも役立てばと思い、病気のことを公表しました。
結婚しても祝福してくれたファンに感謝
── 今回の病気がきっかけで、結婚を考えるようになったそうですね。
伊藤さん：夫は一般の方です。古くからのつき合いで、信頼できる方なのでいろいろ相談はしていて、入院するときも背中を押してくれたり、支えてくれるなかで、存在が大きくなっていきました。
たまたまなんですが、手術日が彼の誕生日になってしまったんです。それを彼に伝えたときに、「僕の誕生日に命に関わる選択をしてくれてありがとう」と言われ、心を打たれました。お互いひとり暮らしが長いので、ひとりでも機嫌を取るのが得意なのですが、二人ならもっと楽しいかもと思えるようになりました。
── ファンの方の反応はどうでしたか？
伊藤さん：私は自分が結婚したらファンの方が離れてしまい、大好きな仕事を続けていけなくなるかもとずっと不安に思っていたんです。
結婚発表では、「応援し支えてくださるファンの皆さまのことを第一に考えてきたつもりです。小さな事務所で地道にキャリアを積んできた私ですが恋愛禁止の国民的アイドルさながらに、ノースキャンダルを胸に誓い、時に過剰なほどに自分を律してきました」と書きました。
「国民的アイドル」ではないので、文章には自虐の意味も込めていますが（笑）、ファンの方々を思う気持ちは文面に書いた通りです。結婚発表後もファンの方の反応がとても気になっていましたが、ありがたいことに、SNSのコメントや事務所に届いた声のほとんどが、温かいもの。「これからも変わらず応援するよ」という声に、とても感動しました。
── 2024年2月にファンクラブを開設されましたが、それも結婚と関係があるのでしょうか？
伊藤さん：ファンの方々と交流を深めたくて、ファンクラブはずっとつくりたいと思っていました。でも、そのタイミングが結婚と重なったので、入会してもらった後に結婚の発表をすることが、ファンへの裏切り行為にならないか、失礼ではないか心配で。
開設のタイミングは悩みに悩んだ結果、結婚発表後にしました。発表後のファンの方々の反応を見て、心おきなく開設することができました。アットホームな雰囲気のファンクラブにしたく、WEB配信なども行っていきたいです。私の第2章についてきてくれるファンの方には、「これからの人生一緒にエンジョイしようね！」という気持ちです。
── これからは、仕事はもちろん、結婚生活も楽しめそうですね。
伊藤さん：そうですね。これからはキャンプとか釣りとか、夫婦らしいことをしてみたいですね。自分たちのペースで、楽しいことを突き詰められたらいいなと思います。
PROFILE 伊藤えみさん
1983年、三重県生まれ。大学在学中の2004年にデビューし、多くのグラビア誌の表紙などを飾る。「日本ラーメン検定」に全国女性トップ成績で合格するほどのラーメン好き。プリザーブドフラワー＆アートフラワーのWEBショップ「flowemir」を展開。
取材・文／酒井明子 画像提供／伊藤えみ
