渡辺美奈代さんには、芸能活動をしている長男の愛弥(まなや)さん(26)と、次男の名月(なづき)さん(20)の二人の息子さんがいます。2人が成人した今、これまでの子育てについて、また、同じ芸能界に身を置く息子さんたちへの思いをお聞きしました。(全4回中の3回)
子育てのロールモデルは母だった
── 渡辺さんのYouTubeチャンネルではふたりの息子さんがご両親にサプライズしたり、成人式を迎えた名月さんから感謝のお手紙などもありましたね。「こんな子に育って欲しい」と思う方も多いと思いますが、子育てで意識されていたことはありますか?
渡辺さん:何もないですよ、本当に。ただただ、私が子育てを楽しませてもらってきたという感覚です。子どものおかげで親としていろいろなことを経験させてもらいましたし、子どもたちにはすごく感謝しています。
子育てにおいては幼少期が黄金期って言いますよね!子どもは幼少期に親にいろんな喜びをくれて既に親孝行してくれてますから。息子たちが今、明るく自分のやりたいことにチャレンジしているのは、親の育て方というより友人や先生方など周りの方に恵まれたんだと思いますね。
あえていうなら、自分が親にしてもらったことを子どもにもしてあげたいという思いがあったので、子育てについては母がロールモデルになっているかもしれません。そういう意味では母に感謝しています。
── お母様と同じように、どんなことをなさったのですか?
渡辺さん:季節の行事を大切にしました。子どもが生まれて初めてのクリスマスのとき、クリスマスツリーは子どもが転倒させたら危ないので買わなくていいかと思ったんですが、「子どもが生まれたら季節の行事はやってあげなければだめよ」と母に言われて、「はっ!」と。
日本は四季があって季節ごとにいろいろなイベントがあります。私も季節の行事を親がたくさんやってくれていて、いい思い出が残っています。子どもとできる行事の限られた時間に気づき、そこからはほとんどの季節行事をやってきました。
子どもたちは大きくなりましたが、それは今でも続いています。わが家の男子たちは無反応。でも、私は全然めげませんよ(笑)。この間のクリスマスやお正月もお部屋を飾ったり、ご馳走をつくったり、私がひとりで盛り上げていろいろ準備するんですけど、結局、私が楽しませてもらっているんです。いつか息子たちが結婚して子どもができたときに、「あぁ、こんなことしてくれてたな」と思い出してくれたら嬉しいなって思います。
ベビーシッター探しには何十人もの面接も
── 子育てと仕事の両立は大変だったのではないでしょうか?
渡辺さん:私というより、マネージャーや周りの人たちが大変だったと思います。子どもを産んだ時点で「子育て最優先」を掲げていたので、幼稚園に入って年間行事表をもらうと、その日のうちにコピーして事務所に提出して、そのスケジュールを見ながら合間に仕事をいれてくれてくれるなど調整してくださいました。
幼稚園に行っている間の9時から11時で取材を入れることもあり、取材先の方に「こんなに早い時間の取材は初めてです」と、言われたこともありましたね(笑)。そういうことをしながら、どうにかこうにかここまで来ました。とにかく、私に合わせてくださったみなさんが大変だったと思います。
泊まりの仕事もあったので、そんな時はベビーシッターさんを頼みました。採用する際、実は何十人も面接したんです。私とではなく子どもとなんですけど。基本的に子どもが泣いてしまうのですが、そんななか、まったく泣かなかった方が2人だけいたんですよ!そのおひとりとは、かれこれ28年のおつき合いをさせてもらっています。今でも息子たちのイベントがあると駆けつけてくれて、私にとっても、もはや母のような存在です。
息子が決めた人生を応援する母でありたい
── 息子さんが芸能界に入りたいと言ってきたときはどう思いましたか?
渡辺さん:長男は中学に上がる頃、三者面談のときに「芸能コースのある学校に行きたい」と言ったんです。親に直接ではなく、三者面談ってところが印象的でしたけど。そのあと、やはり一筋縄ではいかない世界だということをいろいろ伝えたんですけど…。私も親が反対することなく東京に出てきて芸能界の仕事をやらせてもらったので、反対することもできず、「彼の人生だし…」と最後は背中を押しました。
── 愛弥さんがアイドルグループから卒業する際のライブをご家族で観に行かれた様子がYouTubeにありました。渡辺さんが「これまで褒めてこなかったので、よく頑張ったなと思う」と、涙を流していましたね。
渡辺さん:そうですね、息子もまだまだ勉強しないといけない時期だったので、あえて誉めることはしなかったんです。彼自身も、もっと上に行こうという思いがあったので、心から「よく頑張ったね」と言えてなかった。「これで満足してはいけない」とか「まだまだ上には上があるよ」と伝えたい思いが強かったんです。親でもあるし同志でもある。芸能界が大変なことも重々承知してるので、複雑な心境でした。
── 名月さんはK-1にも挑戦されてますね。応援しながらも殴りあう姿に思わず目を覆う渡辺さんの様子もYouTubeで拝見しました。
渡辺さん:K-1は立派なスポーツなんですけど、小さい頃からかわいいかわいいと撫でてきた顔を殴られるのを見るのは正直、親としてはつらいです。殴られる側の親の立場について考えを巡らすこともあります。相手選手の親御さんが大切にしてこられたお顔を息子が殴るわけですから、申し訳ないような複雑な気持ちになりますね。息子が頑張っていることだから応援はしてあげたいですが、正直なところ、辞めてくれるとホッとします…。
犬を飼い始めることで子育てを継続中
── 2人とも成人し、子育てを終えてどんなお気持ちですか?
渡辺さん:成人式という区切りはありましたけど、「子どもと親」という関係は一生変わらないですし、「寂しい」という気持ちはないですね。お弁当作り、学校行事など、ひとつずつ卒業はしていきますけど、巣立っていくなかで当然、通る道といいますか…。あ、でも寂しくなりそうなときに犬を3匹飼い始めました。家は男の子が多いので3匹とも女の子なんです。犬のおかげで寂しくないのかもしれませんね(笑)。
── 愛弥さんは、渡辺さんの結婚した年齢(27歳)に近づいてきましたが、お子さんの結婚を想像することはありますか?
渡辺さん:息子の結婚は楽しみで仕方がないです。だって「孫はかわいい」って皆さんおっしゃるじゃないですか。おばあちゃんとして無責任な愛情が注げるから、どんなふうに孫と向き合うかすっごく楽しみにしています。
以前、長男が同級生のお友達をたくさん連れてきた中の一人に息子がおつき合いしていた彼女がいたんです。私はいつかそういう日が来るだろうと思ってたから全然、大丈夫でしたけど、幼少期から息子を知るマネージャーさんは動揺してましたね(笑)。
私はむしろ彼女が働くお店によくお買い物に行ったり、息子を超えてお友達になるところがあって、息子から「僕より会ってるよね?」と言われたことがあったくらい。いつか家族に女の子が増えるのも楽しみです。
PROFILE 渡辺美奈代さん
フジテレビの番組 『夕やけニャンニャン』発アイドルグループ 「おニャン子クラブ」 のメンバー(会員番号29番)として一世を風靡。1986年7月、シングル 「瞳に約束」 でソロデビュー。ファーストシングルから5枚連続オリコン初登場1位を獲得し、オリコン記録を塗りかえた。これまでに6枚のアルバム、19枚のシングルを発表。芸能活動と併せて家具やインテリア、アパレルのプロデュース・販売など経営者・プロデューサーとして幅広く活躍。2024年にソロデビューから38周年を迎える。
取材・文/加藤文惠 画像提供/渡辺美奈代