豪華衣装もヘッドドレスが重すぎて…
── ちなみに紅白に限定されるかわかりませんが、豪華な衣装で重かったものもありますか?
小林さん:『ネオ幸子』で出場した時が一番重かったんじゃないかな。頭にヘッドドレスというものを被っていて、ちゃんと量ったことはないですけど、たぶん5キロ以上あったと思います。
どの衣装もデザイナーさんがすごく力を入れてくれて、最後の方はどんどん重たくなっていくんですよ。首が重いからお辞儀もできないし横も向けませんから、ずっと正面を向いたまま。1か月公演を年に3回くらいやったことがありましたが、最終的に頚椎をやられましたね。整体の先生から一生付き合っていくと思いますと言われました。その後、ヘッドドレスは本当に重かったので、1か月公演があるときは見た目は同じもので軽いものを作りましたよ。そうじゃないと、とてもとても。
── 入念に準備をされても本番では予想外のこともあったそうですね。
小林さん:変なジンクスがあってね。リハーサルでうまく行かないときは本番で完璧にできるんですよ。でもリハーサルで完璧なときは本番で何か起こるんです。
ある時、幅13メートル、高さ7.5メートルの巨大なウイングがふたつ開く予定でした。リハーサルはうまくいきましたが、本番ではなぜかひとつのウイングしか開かなかったんです。聞くと、3つの軌道装置がありましたが、1つしか作動しなかったと。
── 本番中にトラブルが起きていることに気づきましたか?
小林さん:気づきました。リハーサルでは観客は関係者など少ない人数しかいませんが、それでもものすごい拍手があったんです。それが本番で何十倍もお客さんがいる状態でシーンとしていたので、「あ、これはウイングが上がらなかったんだな」ってわかりましたよ。あとは歌に集中するのみ。限られた時間で自分に何ができるかってなりますよね。歌は歌で、そのとき自分ができる力を出しきったと思っています。
PROFILE 小林幸子さん
1953年生まれ、新潟県出身。64年、10歳で『ウソツキ鴎』でデビュー。79年『おもいで酒』が200万枚突破の大ヒットとなり、日本レコード大賞最優秀歌唱賞をはじめ数々の音楽賞に輝く。その年NHK「紅白歌合戦」初出場。以降34回出場。近年ではニコニコ動画やYouTubeでも活躍し若い世代やネットユーザーからも人気。今年芸能生活60周年を迎える。
取材・文/松永怜 写真提供/幸子プロモーション